黒潮大蛇行によって日本の沿岸部、特に東海、関東地方では大きな影響があることを前回お話ししました。
大蛇行の周辺の沿岸部では海面が上昇するので高潮時では浸水の危険性、また冷たい海底の海水が掻き回され海面に向かい“冷水塊”が発生することにより局地的に大気が冷やされてしまい例年以上に冬が寒いこと、そして南岸低気圧が通常時よりも南寄りの進路となるため暖気が関東に届きらず、関東で大雪が降りやすくなることがあるのです。
さて今回は黒潮大蛇行によって漁業に係る影響についてお話ししてゆきたいと思います。
黒潮の蛇行が確認されてから蛇行幅が徐々に大きくなるにつれて、神奈川中央部の相模湾から静岡県、愛知県沿岸全域にかけてシラスの漁獲量が減ってきます。
今から14年前の2004年(平成16年)、この年は黒潮の蛇行幅が非常に大きかったため静岡県のシラス漁は大打撃を受けたのです。
例年はおよそ9,000~1万トンの水揚げ量がありますが、この年のシラスは1/3ほどの3,000トンまで落ち込みました。
そして昨年、黒潮の蛇行幅が一段と大きくなった7月以降はシラスが全く取れない状態が続き、静岡市の用宗港では全盛期の1/10の水揚げとなってしまいました。
既に流通にも影響が出ており、品薄のため卸値が上昇を続き、スーパーや鮮魚店などではシラスの確保に追われる事態となっています。
黒潮大蛇行でシラス水揚げが減る理由として、シラスとなる“カタクチイワシ”の卵が減少するためなのですが、蛇行によって生ずる渦で海流は東から西へ流れ込み、黒潮が直進しているときとは反転した形になります。
そのため渦によって生じた内転反流で、いつもなら沿岸部にいるカタクチイワシの卵や仔魚が沖合に流されてしまうのです。
また、小さな魚の餌となるプランクトンが少ない黒潮水系に覆われてしまうので漁場形成ができなくなるということも原因の一つとされています。
カタクチイワシ以外にも蛇行の海流で影響を受けている沿岸部ではアワビなど貝類、キンメダイやイカナゴなど地魚全般、更にはカツオやブリ、サバなど外洋魚の漁獲量が減少しており、沿岸で操業する漁業者たちの間では不安や戸惑いの声が広がっています。
画像出典元:https://blogs.yahoo.co.jp/rbssq176/10198036.html