前回では黒潮大蛇行による海流の変化で神奈川から静岡、愛知にかけての沿岸部ではシラスとなる“カタクチイワシ”の仔魚が不漁になることをお話ししました。
昨年確認された黒潮大蛇行は2004年(平成16年)以来の非常に大きな蛇行で、この状態が長期化すると様々な魚種の生息に影響が出てくることは必至です。
東京都島しょ農林水産総合センターでは2004年の海況を以下のとおり総括しています。
伊豆諸島海域では様々な魚種の生息状況に変化が見られました。
八丈島付近に生息するキンメダイが大幅に減少し、その代わりにアオダイの漁獲が増えることが確認されています。
また伊豆諸島では水産重要種に指定されているカツオ、ハマトビウオの漁獲動向に注目されていましたが、カツオは伊豆諸島北側海域の広い海域に於いて漁場が形成されているため漁獲量は安定、ハマトビウオは1987年および1990年の資源低迷期から資源量が回復、1970年代の黒潮大蛇行で見られた漁場動向から、漁場は伊豆諸島の広い海域にて漁場が形成されており堅調な漁獲があることを確認されています。
そのほか、八丈島周辺に生えているテングサの藻場が磯焼けを起こしており、最盛期には600トンの水揚げがあったテングサ漁が、2004年では1トンに満たない水揚げで終わってしまいました。
これは黒潮大蛇行により付近の海水が高温・低酸素となったため、低温・高酸素の環境を好むテングサにとって生息しづらくなったと見られています。
また静岡県伊豆半島ではカジメが枯死する事象が相次ぎ、カジメ群落が消失しており、それと同時に付近に生息するアワビの身痩せが確認されています。
カジメが無くなるということは、これらを餌とするアワビが食料不足になることに繋がるのです。
つまり、カジメ群落の磯焼けによってアワビの資源量は大きく減少してしまい、伊豆での重要水産種のアワビが捕れなくなることは、地元の経済に於いて大きな打撃となるのです。
そのため昨年の黒潮大蛇行が確認された時点で、静岡県では伊豆半島全域の海水温のモニタリング、関東東海海況速報(1都5県)、海上保安庁が発表する海洋速報を注視しています。
このまま海水温の上昇が続くことが予想されるときは、カジメ群落の現地調査を行い、アワビの安全な場所への移植などを行うことを想定しています。
画像出典元:http://blog.livedoor.jp/tosakatsuo/archives/52869263.html