季節の移り変わりとともに魚は産卵や餌を求めて、北へ南へと集団で大移動するものがあります。
これが“回遊”でマグロ、カツオ、サケ、マス、サンマ、ブリ、イワシなどが季節によって移動をしています。
これらの魚が一日、または一時間にどれだけの速度で移動をするのか知ることは、魚が漁場にやってくる時期を想定して、合理的に漁を行うことに役立ちます。
魚の遊泳速度を知るためには様々な方法でアプローチができます。
まず簡単な方法として、自船の舷側など長さが分かるものを目安にして、その距離を魚が進む時間をストップウォッチで計測します。
通過した秒数から時速を求めれば、一日の移動速度が分かりますね。
一昔前まで(今でもか?)主流だった計測方法は、二点の漁場間の移動時間を求める方法があります。
任意の二つの漁場間を魚が移動で要した時間から速度を推定します。
この方法では回遊する魚の集団の移動速度を求めることになるので、個々の魚の遊泳速度までは正確に求めることができませんが、その魚種の平均速度は分かるので漁業では大いに役立ちます。
1960年代にこの方法で北洋のサケ・マス類の移動速度を調べてみたところ、産卵期の回遊群は一日に24キロの速度で海洋を移動していることが分かりました。
他の方法として魚の個体にタグを付けて調べる方法があります。
タグを付けて放流した魚を数日後に別の漁場で再び漁獲されたとしたとき、その間に移動した距離と移動に要した時間から一日平均の移動速度を求めることができます。
最近ではICタグというハイテクなツールがあり、タグのIDをはじめタグに様々な情報を書き込むことができます。
そしてGPSを利用することで、正確な魚の移動過程も知ることができます。
現在、ICタグを利用して、適正なマグロの資源管理をしつつ漁獲をすることを官民一体となって取り組んでおりますが、この話はまた今度にいたしましょう。
さて魚類で最も遊泳速度が速いものはバショウカジキの時速110キロですが、これは餌を見つけてロックオンしたときや、サメなど天敵から逃げるときの一時的な最高速度です。
常に泳ぎ続ける回遊速度で速いものとしてはソウダカツオの時速74キロ、クロマグロの時速70キロなどが挙げられます。