夏の魚にタチウオがあります。一見すると獰猛な顔に見えます。カミソリのような歯をもっているため、生きたタチウオに触るときは細心の注意が必要です。
大きくなると最大2mを超える大きさにもなります。通常は70~80㎝位のようですが、ドラゴン級といって、全長130㎝を超え、幅も指6本以上を言うようです。
タチウオのサイズを表すのに、全長で表現する時と、幅で表現する時があります。全長で測れない太刀魚もあるようで、それはほかの魚に襲われて体調が極端に短い太刀魚もあるためです。幅は人の指の本数であらわしています。写真で見ましたが、極端に短い太刀魚が、よく生きていたなと思いました。
タチウオの体の表面は鱗がなく、全身銀色に輝く「グアニン質」の層で覆われて、海中でもキラキラ金属的な光沢を放ちます。
このグニアン質から採取した銀色は、模造真珠やマニキュアの原料に利用されています。
世界中の温暖な海域に生息し、日本では北海道から南のすべての海で獲ることができます。春から夏にかけて北上し、秋から冬に南下する回遊魚です。
昼は深い海にいるのですが、夜になると浅い海の表層に出てきて、明かりに集まる小魚を餌にします。太刀魚の産卵期は春から秋の間と非常に長い期間です。
タチウオと呼ばれる語源は2説あるようです。
① 餌を捕食するとき、立ち姿のまま泳ぐため、「立魚」と呼ばれる説。
② その外観が太刀に似ているため、「太刀魚」と名付けられた説。
タチウオは美味しい魚ですが、しなやかな体つきをしているため、小骨が多い魚です。
焼き物などにする際は、小骨の処理をしたほうが食べやすくなります。また、ムニエルやポアレなどにすると大変おいしい魚です。タチウオの身は柔らかく、煮ると崩れやすくなります。
新鮮であれば皮付のまま刺身にすると、皮と身の間に旨味が詰まっていて、とても美味しくいただけますよ。
タチウオは底引き網や定置網で大量に漁獲できますが、体に傷がついてしまいます。一本釣りの場合は、とてもきれいな状態で漁獲できるため、高値で扱われるようです。
タチウオの産地としては瀬戸内海周辺が多く、和歌山や徳島も漁獲量の多い県です。
タチウオの旬は夏です。白身で淡白な印象ですが、脂質が多く含まれている割に、脂っこく感じさせないのは、オレイン酸が多いためです。悪玉コレステロールを減らす働きがあり、安心して食べられる魚です。
「太刀魚の 光歪めて 釣られけり」 稲畑廣太郎
「太刀魚の 諸刃の剣に ひるみけり」 渡邊泰子
「さあ買へと 太刀魚翳す 朝市女」 大森与栄