前回では各々魚には適した水温帯があり、そのなかで絶えず体温が水温と連動していることをおはなししました。
そんな魚の一方で、マグロやカジキなど運動性が非常に優れた魚は魚類では特殊な“奇網”と呼ばれる血管構造を有しています。
まず奇網を用いてエラに気体を送り込み、浮力の調整を行います。
そしてエラの“ガス腺”から静脈血中に乳酸が分泌されてpH値が下がりますが、このときヘモグロビンから酸素が遊離すると同時に炭素水素イオンが二酸化炭素に変換されます。
これらの気体は奇網の対向流交換系を通じて動脈へ拡散され、再びガス腺に戻ってエラから放出されます。
熱やイオン、気体など血管壁を通じて効率よく交換することができるので、高速で泳ぐ運動能力を保つために必要な代謝を確保することができます。
つまり、これらの魚では体温が高く保てるようになっているのです。
マグロを釣り上げるとき、暴れさせると体温が上がって身の色がくすんでしまう“身焼け”というものがありますが、それは身の危機を感じて逃避するために激しく動いており、そのときの体内は乳酸が多く分泌されて代謝が大きくなっているからなのです。
身焼けだけでも商品価値は大きく下がりますが、更に水分が抜けてスカスカの状態になると味も食感も大きく落ちるので商品としては成り立ちません。
さて基本的な魚類の“体温と水温”のはなしに戻りますが、周囲の水温が上下して自身の最適な水温範囲から外れると、魚は居心地がいい温度の水域に向かって移動をします。
一般的にサンマなど回遊をする魚は水温が連続的に変化している水域では好みの水温のところを選び、また連続的に水温が変化していない場合でも適温の場所を上手く探して辿りつくことができます。
そのため漁に出るときはその様な水域に船を走らせて、群れをなして回遊している魚を捕えるのです。
日本近海で漁獲される魚の適温は、カツオが18~30℃(うち最適温は20~23℃)、マサバは11~18℃(最適温15℃)、サンマは12~20℃(最適温14~18℃)となっています。
つまり、魚は自分の生活に適した温度の水域に身を移すことによって、体温を調整して生活しているのです。
画像出典元:http://kzfishing.com/Cooking/Cooking-3.htm