近畿大学、ウナギ味のナマズ量産化への道のり


鹿児島県の大隅半島、航空自衛隊基地がある鹿屋市とウナギの養殖で国内シェアトップを誇る志布志市の中間に東串良町という小さな町があります。
その町の田んぼが広がる田園風景の中に10を超えるビニールハウス群があり、育てているのは何とウナギとドジョウです。
1973年に設立された有限会社牧原養鰻が運営を行っており、年間40トンのウナギを出荷しています。
鹿児島県は桜島などの火山噴出物からなるシラス層の台地が多く、清らかな地下水がシラス層の土壌のカルシウムを潤沢に含有しているので、ウナギ養殖をするには最適な場所なのです。

2015年11月13日、近畿大学農学部と牧原養鰻が「日本なまず生産株式会社」を立ち上げ、取締役に准教授の有路昌彦氏が就任しました。
6年前の2009年、有路氏は顔馴染みのウナギ養殖業者やウナギ専門店から受けた相談がきっかけでした。
二ホンウナギの資源が減少しており、このままでは資源の枯渇や経営が行き詰まるというものでした。
有路氏は淡水魚で、資源量が多く且つ味がウナギに似ているものはないか探し始めます。

琵琶湖で食べたイワトコナマズの蒲焼を食べたとき、非常に美味しいものでウナギと同格、もしくはそれ以上のものでした。
しかし、イワトコナマズは生息量が大変少ない魚種、そこで有路氏は一般的なマナマズで応用できないか思案します。
琵琶湖の漁師が作ったマナマズの蒲焼は思った通り美味しいものでしたが、東大阪の研究室近くに流れている川で捕ったマナマズの蒲焼は非常に不味く、とても食べられるものではありませんでした。
その要因を追及したところ、マナマズは生息している環境の水質と摂餌している餌の質によって身の味が極端に変わることがわかりました。

有路氏は既存の淡水魚、果ては海水魚の配合を調合し続けて、マナマズの身がウナギの味に近づけるように研究を続けました。
既存の餌を組み合わせることで配合を開発する手間やコストが抑えられ、ウナギの味に近づいたとき、この研究結果を元にビジネスとして成り立つと考えていました。

そして実際にマナマズを生産実験するため、ウナギ業者をあたりました。
大半のウナギ生産業者からは色よい返事がありませんでしたが、鹿児島の牧原養鰻が実験の協力を申し出ました。
そして2015年2月、目指していたウナギ味のマナマズの種苗が生産成功しました。

販売試験をするにあたり、ここでも大半のウナギ料理店などからは「売れるものではない」と否定的な見方でしたが、奈良県のウナギ料理店「うなぎの川はら」で販売試験をしてみたところ消費者のコメントは予想以上に好評でした。
蒲焼料理で出したのですが、ウナギの味と殆ど遜色なく美味しいというものでした。
しかも値段が鰻の蒲焼よりも半値近くで販売しても利益が十分に取れるのです。

これらの結果を元に、今回近大と牧原養鰻の共同経営会社を設立して、マナマズの本格的生産に入ることに至りました。
来年の「土用の丑の日」までには、供給の安定を図りたいとしています。

※参考文献
参考文献:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1505/25/news049.html

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