寒ブリが旨い季節になりましたね…ブリあれこれ②


前回、ブリの生活史について綴りました。
さて、「寒ブリ」の水揚げは富山県の氷見がとても有名です。
そこに寒ブリが集まる理由、それはブリの回遊行動と密着な関係があるのです。

成長を続け、すっかり成魚になったブリは産卵活動に参加します。
春から夏にかけて、ブリは対馬海流に乗って日本海を北上し続けます。
1,500km以上の距離を泳ぎ続けるブリの尾ヒレは強靭で、一振り15~20m、時速40kmのスピードが出せるのです。
日本海を北上して北限の北海道沿岸に辿りつくと、沢山餌を食べて身に栄養を付け始めます。
翌年春の産卵期を迎えるためです。
やがて本州では秋が深まってくる11月、北海道は一足早い冬の訪れがやって来ます。
その季節になると、ブリは産卵場所の長崎・五島列島沖合を目指して南下を始めます。

冬になり、荒れた日本海沿岸を南下してゆくうちに、回遊群は能登半島の出っ張りにぶつかり、能登半島手前の富山湾の氷見では沢山のブリが獲れるのです。
昔より、富山湾では冬の初めに雷雨が激しく降り、海が非常に荒れます。
これを「鰤起こし」といい、漁師たちはブリ漁の幕開けに心を躍らせます。
旬の3月初旬まで氷見では寒ブリの水揚げが続き、浜は活気で賑わいます。
氷見で水揚げされるブリは最も身に脂が乗っている状態で、水揚げされた魚は10kg以上の大型のものがとても多いのです。
その中には15kg以上のジャンボ級のブリもあります。
太平洋産のブリは身が桃色ですが、この氷見の寒ブリは身が白く、味わいもこってりとしており深い旨みが堪能できます。
まさに「寒ブリ」と呼ぶにふさわしいブリなのです。

氷見で漁獲されなかったブリはそのまま日本海を南下してゆきますが、栄養が卵巣や精巣に持ってゆかれてしまい、更に泳ぐ力を使うことで少しずつ身が痩せてゆくのです。
最も脂が乗っているブリが氷見で獲れるのは地理的な理由が大きいのでした。

氷見の寒ブリ漁は定置網が主流ですが、この定置網の仕掛けは先人からの知恵が今も息づいています。
網にかかっても、約7割の魚は逃げてしまうのです。
全ての魚を獲りつくして海洋資源が枯渇しないための工夫がなされているのです。

「ブリ」という名前はアブラの多い魚の意が転じたことが由来です。
漢字で書くと魚編に師、寒い師走に食べると旨い魚、利口で網にかからない知恵がある魚など諸説あります。

この冬は皆様思い思いの料理法で、脂が乗った寒ブリを楽しむのは如何でしょうか。
私はこの後、魚屋に寒ブリ求めてひとっ走りしてきます。

画像出典元:http://buccorori.blog62.fc2.com/blog-entry-538.html

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