海中に投入した1,500メートルの網が分速16メートルの速さで巻き揚げられています。
ネットホーラーで巻き揚げられた網を巧みにクレーンで甲板の網置き場に載せてゆき、次の漁で網や浮き具が絡まないように均等に収納するため数人がかりで網を捌き、船首では海底部側のワイヤーがウインチで巻き揚げられ、ワイヤー取り付ける網の丸環を取り外します。
各々漁師たちは自分の持ち場で無駄のない動きで淡々と作業を進めてゆきます。※1
船長は乗組員全ての動きを監視して、安全操業に対して重大な任務を背負っているので、危ないことや、無理な網揚げをすると甲板のスピーカーから怒鳴り声が聞こえます。
慎重にゆっくりと網を巻き揚げます。
徐々に旋網の輪が小さくなってくると、網の中に無数の魚の鱗が光っているのが見えてきます。※2
網船の揚げ網は船体後部の甲板にまとめていますが、魚を掬えるまで網の輪が小さくなると船体右側に取り付けているサイドローラーで網を引っ張り上げます。
さて、これから漁のクライマックス積取り作業に入ります。
網にはアジやサバ、イワシ、タイ、ブリ、カンパチ、キハダマグロなどおびただしい量の魚が集まっています。
また、春はサクラダイ、夏はタチウオなど季節の魚が獲れ、ときにはサメが網にかかっています。
大きなアゼ網(モッコ網)で網の中の魚を掬い、運搬船に積み込みます。※3
運搬船の魚槽は氷がたっぷり敷き詰められており、魚の鮮度を保ったまま漁港へ出荷することができるのです。
何度もアゼ網で大量の魚を掬い、運搬船の魚槽に収める光景は大変ダイナミックです。
魚を掬い終えて、網が全て網船の甲板に収まり、これで操業は終了です。※4
操業した海域に魚影がまだ沢山あるときは、再び網をレッコボートに渡して操業を始め、魚がないときは魚影を求めて別の漁場へ灯船が走ります。
概ね、一晩に3~6回ほど操業をします。
日の出を迎えると、船は全速で漁港に向けて帰還します。
甲板の作業道具の片付けをして今日の仕事は終了です。
厳しい顔をしていた漁師たちにやっと笑顔が戻る瞬間でもあります。
台所から料理長が炊き立てのご飯と、操業で賄いに取り置きした魚の刺身が出てきます。
朝日に輝く海を眺めながら、山盛りのアツアツ御飯の上に新鮮な刺身を載せた漁師めしを海の磯の香りを嗅ぎながら食べるのはこの上ない幸せです。
食事後、漁港に到着するまで漁師たちは仮眠室で寝息を立てています。
漁場が基地港より遠く、海が数日穏やかな時は、運搬船だけ漁港に戻り魚を水揚げします。
その他の船は漁場周辺に錨を下して日没になるまで停泊します。
エンジンが止まり、波の音だけが聞こえます。
昨夜の重労働の疲れが押し寄せ、あっという間に深い眠りに入ります。
4話に渡って旋網漁船の乗船体験記を綴りました。
私が世話になった会社は若い漁師が沢山活躍しており、大変活気に溢れていました。
風の便りで今はもっと若い漁師たちが頑張っているそうです。
※1画像出典元:http://www.kashiwagi-suisan.co.jp/
※2画像出典元:http://www.pref.shimane.lg.jp/
※3画像出典元:※3 http://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/shigoto-sangyo/
※4画像出典元:http://www.pref.oita.jp/