毎年4月から5月にかけて、鹿児島ではモジャコ漁が行われています。
鹿児島県内海域のモジャコ概況を県水産振興課のホームページに記載されており、週単位で情報が更新されています。
何だか特別な魚のように思えるこのモジャコの正体、実はブリの稚魚なのです。
魚の養殖は卵を人工ふ化して種苗を育て上げるところもありますが、民間業者の場合、天然の稚魚を採捕して商品価値があるサイズまで畜養することの方が多いです。
卵のふ化から初期飼育を経て飼育する場合、大型の飼育施設や海水ろ過施設が必要になり、イニシャルコストは当然のことながら、飼育途中のランニングコストも莫大な金額になります。
また、初期飼育はウイルスなどによる疾病や、共食いなど減耗が激しく、疾病原因のウイルスの種類によっては水槽内の種苗を殺処分して消毒をしなければなりません。
一方、ある程度大きくなって自分で泳いで餌を摂餌できる稚魚を確保して畜養する場合は、
沖合に生け簀を張り、飼育スペースを確保するだけの最低限な施設だけで運営が可能です。
話をモジャコに戻して、ブリの稚魚がモジャコと呼ばれる所以ですが、ホンダワラの流れ藻や漂流物にくっついてブリの稚魚が固まっているとされています。
モジャコは資源保護の観点から操業期間が23日と大変短く、短期決戦の漁なのです。
そのため、解禁になっても流れ藻を探し続ければならず、漁師にとって大きな労力と燃料の消費になってしまいます。
そこで、鹿児島県では流れてくる藻が県内海域のどこに存在しているのか、最新情報を提供しているのです。
薩摩半島南部に流れてくる藻の発生地は中国大陸沿岸ということを突き止めています。
1月から3月にかけて発生した藻は海の流れに乗って運ばれる間に、波で藻のかたまりが千切れて細かくなります。
鹿児島県のブリの産卵地はユーラシア大陸棚の淵から薩摩半島南方沖合とされています。
2月から4月にかけてブリの産卵期に流れ藻はここを通過して、生まれたばかりの仔魚から成長した稚魚が藻に随伴することが推定されています。
県からのモジャコ概況情報を元に、漁師たちは流れ藻のある所へ船を走らせます。
流れ藻を網で囲い込んでモジャコを取り上げます。
取り上げたモジャコは、傷が付かないように船の魚槽へ収容します。
養殖場の生け簀に戻ったら、捕獲したモジャコを底が網目になっている箱に入れます。
小さい魚体は網目から抜け、残った大きい魚体の個体は別の生け簀に移します。
生け簀の魚をサイズ毎に揃えて飼育をします。
選別をすることで給餌や成長過程の管理がしやすくなり、それ以外に大きい魚が小さい魚を追い回してストレスを与えたり、共食いすることが防げます。
選別を終えると、魚が商品サイズになるまで養殖が始まります。