南の国の美味しい魚・スジアラ


スズキ目、スズキ亜科の分類でハタ科が存在します。
ハタ科は3つか4つの分類に分かれ、60以上の属と450種にも及ぶ魚が存在します。
そのうち、ハタと定義される魚は26種、190種になります。
有名な魚は、アカハタ、バラハタ、マハタ、クエ、タマカイなどがあります。

全ての魚種が海水魚で、熱帯から温帯の水域の浅瀬のサンゴ礁や岩礁に生息します。
ハタ類の特徴として、下あごが上あごより突き出ており、体は下膨れの楕円形、赤や青、黄色など鮮やかな体色などがあります。
また、メスとして個体の繁殖に参加した後、オスに性転換して個体の繁殖活動を行う特徴もあります。

体の鮮やかさに似合わず、かなりの獰猛性な性格で魚類、甲殻類、頭足類など大きな口で捕食します。
ときには、自分より大きな個体の獲物に喰らいつくこともあります。

さて今回はハタ類の中の一種、スジアラをご紹介します。
スジアラは鹿児島など南九州から沖縄、オーストラリア、西太平洋方面の温帯水域に生息しています。
鮮やかな赤色の体に赤褐色の小さな斑紋が無数にあり、成魚は体調1メートルまで達します。
鹿児島では「アラ」、沖縄では「ハージン」、「アカジンミーバイ」などと呼ばれており、漁獲量が大変少なく、高価で取引されています。
時折、僅かな量ではありますが関東方面へもスジアラが出荷されています。
沖縄では、このスジアラと「アカマチ」と呼ばれるフエダイ、「マクブ」と呼ぶベラを三大高級魚とされています。

スジアラの旬は秋から初夏と、夏場の産卵期以外ほぼ一年を通じて非常に美味な魚です。
鱗が小さくて取りにくいので、薄皮をすき引きします。
おろしたての新しい白身は鮮やかで透明感がありますが、熱を加えることで身が締まり程よく繊維質の身離れが良いとされています。
皮、骨、筋肉、アラは強い旨みがあり、汁物の出汁に最高です。
スジアラの身の旨みと昆布を出汁にした味噌汁は、濃厚な味わいがたまりません。

スジアラ料理は様々なレパートリーがあり、皮付きの湯引きは酢味噌や梅肉酢で食べると非常にまろやかです。
そして沖縄では、スジアラを薄い塩水で強く蒸し煮することで、身がふっくらで、皮のゼラチン質がなめらかな「まーす煮」が好まれています。
刺身は白い身が深く甘い味わいを醸し出し、寿司ネタにも使用されています。
他にも焼き魚、唐揚げ、ソテーなどの調理方法があります。

現在、鹿児島と沖縄の栽培漁業機関ではスジアラの種苗生産を行っています。
1990年代に種苗生産試験を開始した直後は、ふ化直後の仔魚が海中に潜れず浮上して大量死亡するケースや、激しい共食いによる減耗など種苗生産の課題が沢山ありましたが、安定した生産を目指し日々研究が続けられました。
2007年になってスジアラ種苗生産が軌道に乗り、人工ふ化して育てた稚魚の放流を行えるまで飼育技術が発展しました。

石垣島にある国の栽培漁業機関、独立行政法人水産総合研究センター西海区水産研究所亜熱帯研究センターでは成魚になるまでの養殖試験を行っています。
養殖が事業ベースになった折には、石垣島の産業振興に繋げたいとしています。

画像出典元:http://street1995.exblog.jp/

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