アワビ・トコブシの栽培漁業…採卵の前の準備  (その2)


さて、前回ではアワビ類の栽培漁業概要と堅い話になってしまいましたが、今回はどの様に現場で種苗生産が行われているかお話をしたいと思います。

私はトコブシ亜種のフクトコブシ生産を行っておりました。
東京八丈島を北端に九州、沖縄、台湾方面など温かい水温域に生息する種族です。
成貝の殻長が7センチのトコブシは、殻長が15センチ以上のアワビより大きさは一回り小さいですが、成長過程はアワビよりもぐっと早いです。
アワビの場合、放流サイズの2センチ以上に達するまで1年半以上の時間を要しますが、フクトコブシの場合は概ね10か月です。

さて、トコブシの生産は採卵の半年前から準備を行います。
採卵に供する親貝の買い付けから種苗生産が始まります。
トコブシ漁が解禁する時期はゴールデンウィーク明けです。
この時期に、お世話になっている漁協に連絡をして、水揚げされたトコブシをキープしてもらいます。
そして漁協に赴いて、採卵に適しているトコブシ親貝の候補を選別します。

漁協に到着すると、大きな水槽の中にカゴが入っており、その中には水揚げされたばかりのトコブシがぎっしりと詰まっています。
それらの貝を選別するのですが、気を付けなければならない点が幾つかあります。

①以前放流した貝ではないこと
放流した貝は殻のキワが水色です。
人工配合で成長した稚貝は、青い殻になってしまうのです。
勿論、生育にも食用に供するにも全く問題はありません。
放流貝は自然の環境で育つにつれ、貝殻は褐色になりますが、稚貝の頃の貝の色が残っています。
血筋の問題もあり、採卵に供する親貝は天然が望ましいのです。
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画像出典元:http://www2.pref.iwate.jp/~hp5507/awabi/awabi-new.htm

②メスを多めに選別する
買い付け後、親貝は専用の水槽で飼育をして、秋の採卵時期になるまでに昆布やワカメを与えて畜養させます。
畜養して肉付きがよくなった貝を採卵で使用しますが、オスが比較的早く精子を出すのに対し、メスは卵を出すまでに時間がかかりやすい傾向があります。
そのため、メスの貝を多めに選別して採卵候補を増やします。
オスメスの見分け方は、貝の足をめくり白色がオス、濃いピンク色がメス(アワビの場合は緑色)です。



画像出典元:http://www2.pref.iwate.jp/~hp5507/awabi/awabi-new.htm

③活力のある貝を選ぶこと
貝に限らずですが、採卵に供するにあたり弱っているものは真っ先に候補から外します。
他に貝の肉に傷がついていないか確認をします。

その年の生産量により買い付ける量は異なりますが、概ね60キログラム(個数にして1,400個)ほど確保します。
確保した親貝は漁協でチャーターした漁船で事業場まで輸送するか、発泡スチロール内に酸素を充てんした袋の中へ入れた貝を無水状態で航空輸送をします。

Top画像出典元:http://andyrich.blog59.fc2.com/blog-entry-16.html

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