秋が深まるにつれて、水揚げされる魚のひとつに“ボラ”があります。
関東では主に千葉で水揚げされたものが流通しており、とても安い単価で取引されています。
昭和時代中ごろまでは、東京湾内の内房や浦安沖で良く獲れて、また養殖もされていました。
海苔の養殖で使われている「ひび」の合間でボラ釣りが行われていたもので、碇型の針の上に赤や黄色のゴムの切れ端を付けて、竿を小刻みに上下に動かしているとゴムが餌と思い込んだボラが寄って来て、碇にアゴが引っ掛けられてしまいます。
大きなボラが掛かると太い釣り竿がキュッとしなり、そのときに引き上げると銀色に輝くボラが勢いよく飛び込んでくる、そんな豪快な釣り方をしていたといいます。
ボラはオホーツク海を除く北海道から九州南部にかけての太平洋、日本海、瀬戸内海、東シナ海、琉球列島にかけて日本沿岸では広く見ることのできる魚です。
また、日本沿岸以外でも朝鮮半島から中国大陸、東南アジア、北緯51度から南緯42度の範囲の全世界で生息しています。
世界的にはボラは重要な食用魚のひとつでありますが、日本ではほとんど利用されていないマイナーな魚に分類されます。
そして今では非常に単価が安い魚ですが、海洋汚染が起こる昭和中期の高度成長期前までは高級魚だったのです。
とても澄んだクセのない味わいで、刺身はもちろん煮付けや汁物、焼きなどあらゆる料理で重宝されていました。
今でも都市部の内湾、河口付近に生息していますが、汚れた海水の中で生活しているので泥臭さが強いです。
ボラは主に内湾や河口付近の海水と淡水が混ざる淡水域に多く生息している魚で、夏の間は川の上流まで遡ります。
秋になり水温が下がるとまた海に下り、波の静かな内湾の底で冬を越しますが、そのときに卵を産むのです。
泳ぎがとても敏速な魚で、釣りをしたとき撒き餌に群がって人間の近くにやって来ますが、手やタモで捕まえるのはとても難しいです。
時折、水面から飛び上がりかなり高くジャンプをしますが、大きな音に驚く、体表に付いた寄生虫を落とすなど様々な諸説がありますが、まだ解明されていません。
成魚は50センチ程の大きさ、そのサイズの魚が水面から飛び上がったときに人に衝突することもあり、競艇場でボートレーサーに衝突して失神させたこともあるそうです。
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