私が合羽に着替えたら…漁師体験記(その1)


のっけから、二十年以上昔の映画のタイトルみたいになってしまいましたが…。
原田知世さんが主演されるような爽やかなお話ではありませんので、悪しからず。

私は以前、南九州にて漁船に乗っていたことがあります。
本格的な漁師ではなく研修生で数か月の間でしたが、乗船中は一般社会では経験できない様々な出来事があり、漁師たちの魚に対する思いや大切にしている郷土愛など、言葉では表しきれない沢山のことを学びました。

私が乗船していた船は旋網(まきあみ)漁の船でした。
旋網漁の漁法についてはこちらをご覧ください。
夜間に、数隻の船で船団を組んで漁を行います。
旋網漁船団は網船と運搬船が1隻ずつ、灯船が2隻という構成が一般的です。

手順としては、灯船(とうせん)がソナーや魚群探知機で魚の群れを探し、魚群を見つけたら海中を集魚灯で灯して魚を集めます。
網船の網の端を灯船に渡して、灯船の光に集まった魚を網で囲います。
これを投網といいます。※1
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囲った魚群を海底側の網に取り付けられたワイヤーで慎重に絞ってゆき、最終的には海底の網を締め切って魚が逃げないようにします。
この作業を環底といい、大きな網で魚をすくうような感じです。※2
2

魚群を囲った網を取り上げる揚げ網作業ですが、網を引っ張る網船は魚の重さで重くなり航行のバランスが不安定になってしまいます。
そのため、網船の対面側に運搬船が航行して魚が入った網を押さえてバランスを取ります。
網船は網を巻き取ってゆくうちに徐々に魚が密集します。
小さくなった網の輪に集まった魚を運搬船のアゼ網ですくい取り、運搬船の魚槽に魚を収容する作業を積取りといいます。
魚槽は魚の鮮度を保つため、氷が張られています。※3
3

一回の漁におよそ2時間要し、夜が明けるまで漁を行います。

満月の前後数日間は、強く明るい月の光が海上を照らし灯船の集魚灯の効果が弱まります。
この期間を「月夜間」といい漁師たちの休日で、船や網のメンテナンスもこの期間に行います。
月夜間以外にはお盆、年末年始が定期的な休みとなります。
その他、悪天候や海上が強風で高波(概ね2.5メートル以上の波)のときには漁が中止になります。
風と波が微妙に高く、今日は漁に出られないと高を括っていたら、ライバル会社の旋網船団が沖に出てゆき、急遽漁が決行ということもありました。
なんで今日は休みじゃないのと恨み節をこぼす人、沖に出るのが嬉しい人と悲喜交々な漁港でした。

 

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