さて前回は「土用の丑の日」とは何なんだ!?ということについてでしたが、今回はその土用の丑の日と「ウナギ」についての関連について綴ってゆきたいと思います。
昨年掲載したこの記事にて、日本人が夏の土用にウナギを食べるようになったのは平賀源内が言いだしたことだったことをお話ししています。
源内は伝えるところによればかなりの「奇人」だったようですが、元々が博識な学者なのだから、彼が言った「夏痩せした人はウナギを食べて精を出せい」という言葉に庶民たちはつらい夏を乗り切る工夫として取り入れたのでした。
しかし夏バテにウナギがいいということは、平賀源内が提言したときよりももっと昔から言われてきたことだったのです。
万葉集の巻十六、大伴家持が詠んだ句でこんなものがあります。
「石麿呂にわれ物申す夏痩によしというものぞむなぎ取りめせ」
この句中のむなぎ(武奈伎)とは古いウナギの呼び方です。
この石麿呂という人はひどく痩せていた人のようで、心配した家持は夏痩せに効き目があるウナギを石麿呂に食べてみてはどうかと言ったのでした。
それから1世紀が過ぎた江戸時代、源内は一般大衆に漠然としてウナギを食べよと言うよりも、日を決めておいた方が忘れないから「土用丑の日」をウナギの日と決めたという説もありますが果たして?
では果たして「土用丑の日」のウナギというのは他の季節よりも体が充実して、栄養的に良くて美味しいものなのでしょうか。
今でこそ日本で流通しているほとんどのウナギは養殖のものであり(天然は何とたったの0.3%!!)、一年で最も需要がある時期に脂が乗った美味しい状態で出荷するという流通スタイルが構築されていますが、元来天然のウナギは普通の魚に見られるような“旬”と呼ばれる季節がないのです。
一般的に旬とは産卵期直前のことをいい、この時期の魚は産卵のために栄養を付けているので身に脂が非常に乗っており大変美味しいのです。
しかしウナギは日本沿岸や近海で産卵をせず、マリアナ海溝付近の暖かい海域で産卵するので、日本で獲れたウナギで卵を持って熟した個体というのは決して見ることができません。
基本的には一年を通じてウナギの体の状態はさほど変化が見られませんが、晩秋になり冬眠を前に栄養を摂っている個体や、数年から十年という長い期間を川や湖で生活した個体が産卵のために海に向かう「下りウナギ」が最も美味とされています。
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