シーモンキーと種苗生産のお話 その3


えーと、思いの外執筆している自分だけが盛り上がり第3話に突入してしまいました。
さて前回の続き、2004年のアメリカのアルテミア不漁のお話をしましょうか。
結局、アメリカ産のアルテミアは全くと言っていいほど入手することができず、東南アジアの某国産のものを代替使用することにしました。
見積もりを取ったとき、普段のアメリカ産よりもエライ安い価格だったので驚きましたが、品質的には、やはり値段相応のものでした。
大抵アルテミアは1単位が454グラムの1ポンド缶で納品されますが、入荷した缶の出来の悪さに嫌な予感がしました。
案の定というか、ふ化率が非常に悪すぎて7割ふ化をしたら上出来な方、ときには5割程度しかふ化率しないものもありました。
缶のロットによってふ化率が大きく異なるため、安定した餌料供給ができないことに苦労しました。
もっともこの国で生産したもの全ての品質が悪いという話ではなく、このときの乾燥卵は採捕してから2年以上経過していたという古いもので、全くアルテミア卵が入手できなかったための最終手段で求めたレアケースでした。
何よりふ化したアルテミアの活力には問題がなかったため、給餌用として問題はありませんでした。
今でも、あのアルテミア卵争奪戦を思い出すと胃がキリキリ痛みます。
何だかよくわからない回想が続いてしまいましたが、ともあれ種苗生産機関にとってアルテミアは大切な存在ということはご理解いただけたかと思います。
実際どのような感じで仔魚にアルテミアを給餌するのかご説明しましょう。
まず仔魚の飼育数によってアルテミアの給餌量が決まります。
それに見合った卵を用意して、28度に保温した海水(30%水道水で希釈する)を張った水槽に投入します。
水槽内の海水は強いエアレーションがされており卵が撹拌されます。
そして卵を海水に投入してから24時間後、エアレーションを止めてふ化した幼生の収容に入ります。
このアルテミア水槽には遮光幕が張ってあり、また水槽の輩出口は投光器が設置されています。
アルテミアは走光性があり光に対して集まるので、水槽の出口へ簡単に誘導ができます。
また卵の殻は海水の表面に浮くため綺麗に分離した状態で幼生を収容するとができ、餌に異物が混入することが防げます。
小さい目合のナイロンネット袋に幼生を収容して洗浄しますが、直ちに餌になるのではなく別の水槽に収容されます。
ふ化したてのアルテミア幼生には栄養分が殆ど含まれていないため、仔魚の餌としては相応しくありません。
そこで水槽内の幼生に栄養剤を添加する必要があります。
水産餌料メーカーではアルテミアの栄養強化剤を販売しており、これを与えることでDHAやカロチンなど添加することができます。
そして一日かけて栄養強化したアルテミアはようやく仔魚の餌となり、給餌対象の飼育水槽へ送り込まれるのです。
給餌してから数時間後の仔魚のお腹には、沢山のアルテミアがいることが確認できます。
アルテミアと種苗初期生産は切っても切れない縁があるお話でした。
画像出典元:http://blogs.yahoo.co.jp/okinawablog/36882164.html

 

シーモンキーと種苗生産のお話 その2

新鮮な鮮魚が手軽に買える、サカマアプリ

blank

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事