さて、前回の続きです。
生まれたての仔魚が餌を食べだすようになる頃、魚類種苗生産機関では動物プランクトンの“シオミズツボワムシ”を最初に与えることを綴りました。
ワムシを食べ始めた仔魚はすくすくと育ち、それに伴い摂餌量も増えます。
1㎜成長することに摂餌量の増え方は倍数ではなく乗数の勢いで増えるため、そのうちにワムシだけでは餌の供給が追い付かなくなります。
栄養供給が少しでも滞るとすぐに死亡してしまう仔魚の飼育は大変ナーバスなものであり、この期間を安定且つ高い歩留まりで飼育が継続できる餌を先人たちは探し続けていました。
その要望を満たすことができる餌料というものがシーモンキーこと“アルテミア”だったのです。
0.1㎜ほどのワムシに対して、アルテミアはふ化直後でも1㎜の体長があります。
つまり、アルテミア1個体に対してワムシ10個分のボリュームがあるので、育ち盛りの仔魚の餌にはうってつけです。
アルテミアを使用する最大の理由として、取り扱いが簡単であり安定した餌料供給ができるということが挙げられます。
アルテミアの卵は長期間乾燥に耐えられるもので保存がきき、塩水に漬けると24時間で個体がふ化するため必用な給餌量に応じて生産することができます。
魚類生産機関が利用するアルテミア卵は、主にアメリカや中国、タイから輸入されています。
とくにアメリカ・ユタ州のグレートソルト湖やサンフランシスコ湾で採捕されたものが大変品質が良く、採捕してから1年程度の乾燥卵は9割以上のふ化率がありました。
敢えてアルテミアを利用するデメリットを挙げるなら、アルテミアの採捕量により値段が変動しますが、これに為替レートの変動も加味されるため値段が安定しないことでしょうか。
過去に私が種苗生産機関で勤務していた頃、常にアメリカ産アルテミア卵を確保して初期種苗飼育に挑んでいました。
2004年頃だったか、アメリカ産のアルテミアが絶不調で全く国内に入ってこないときは大変難儀をした記憶があります。
前年に比べて倍近い金額だったことに驚きでしたが、安定した種苗生産を行うためには背に腹は代えられませんがモノが全く入って来ず、アルテミア販売会社もアメリカから出荷の連絡をやきもきして待っていたようでした。
そして僅かに輸入されたときは全国の魚類生産機関で奪い合いになり、自分たちに在庫があると知れたものなら融通をしてくれないかという他機関からの電話が鳴りやみませんでしたね。
画像出典元:http://withyoume.seesaa.net/article/156051266.html