正月と種苗生産者の願い

正月の空を見上げていると、十数年前に勤めていた種苗生産機関のことを思い出します。
そこではマダイ、ヒラメをはじめトコブシなど種苗を生育しており、ある程度の大きさまで成長させると県内の沿岸に放流して県内の漁業資源維持に貢献していました。
我が職場は屋外水槽にトコブシと、採卵に供するマダイの親魚を飼育、そして魚類の種苗生産は屋内のコンクリート製大型水槽で飼育をしていました。

正月の時期は、屋外の水槽に昨年の秋にふ化して餌をもりもり食べて日々大きくなっているトコブシの種苗と、春の採卵を控えているマダイの親魚だけを飼育しています。
屋内の魚類種苗飼育水槽はがらんどうで、昨年の夏に県内各地へ出荷した種苗飼育の跡が今も静かに残っています。
何も物音がしない水槽の前に立つと、真夏の灼熱の太陽が照り付けて体感気温40度以上の魚類水槽棟で毎朝汗だくになって、活魚車に元気な種苗を載せていたことが遠い昔のように思えます。

和やかな正月が過ぎるとすぐに今年の魚類生産が始まります。
予定では2週間後、ヒラメの卵が数十万粒入荷することになっています。
仕事始めの翌日から種苗飼育水槽を殺菌して洗浄、弱いふ化したての種苗が病気になることなく育ってもらうために砂利やアンスラサイトでろ過した海水の送り込みの準備、そしてふ化した後に口が開いて餌をすぐに食べられるように、初期餌料となる“シオミズツボワムシ”の培養などやることがいっぱいあります。

静かな魚類種苗飼育水槽棟を出て、雲一つない澄んだ正月の空に向かって、今年も元気な種苗たちが育ってほしいと願っていたものでした。
画像出典元:http://mitsu55.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-ba3c.html

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