
(1) 出荷時期の遅れ・小ぶり化
2025年、特に養殖牡蠣(マガキ)の水揚げ・出荷が例年より遅延する事例が報告されています。たとえば、国内最大の産地である 広島県では例年10月1日から始まる水揚げが、2025年は約20日にずれ込んだと報じられています。
また、出荷解禁日に生育遅延が要因となり、例年9月末発であるところを、例えば 宮城県では10月27日と後ろ倒しになる見通しという報道もあります。
同時に「身入りが悪い」「殻に対して中身が小さい」「サイズが小ぶり」という消費者・小売店からの声も出ています。
このような現象の背景には、海水温上昇による成長遅延・ストレスの増加・餌の変化などが挙げられています。湾内・浅海域の水温が通常より高めに推移すると、牡蠣の生育にとって最適な温度帯を逸脱し、成長率の低下・体重の獲得遅れにつながるとする調査があります。例えば、瀬戸内海では過去30年で平均水温が約1℃上昇しており、牡蠣養殖における減少傾向の一因とされてきました。
(2) 地域差・例外も
ただし、すべての地域で同じ影響が出ているわけではありません。たとえば、三重県 鳥羽市 浦村湾では、2025年シーズンにおいて「身入りが良い」「漁獲量も多め」という報告も出ています。
このような地域差が生じる背景として、海流・水深・湾構造・養殖いかだの管理・台風・津波など複合的要因が絡んでおり、気温・水温だけで一律に影響が出るものではないことが分かります。
(3) 養殖リスクの高まり
養殖貝類(牡蠣・ホタテ・アサリなど)は、海水温上昇にともなう「高温ストレス」「酸素減少」「餌プランクトンの変化」「藻場・付着藻類の劣化」などの影響を受けやすいと研究で指摘されています。
例えば、高海水温により貝類の代謝・呼吸ストレスが増し、成長が遅れたり、病害・死滅リスクが上がったりするケースがあります。瀬戸内海における調査では、将来的に「牡蠣など貝類の減少」が懸念されており、適応策の検討も行われています。
また、餌(プランクトン等)の量や種類が変化することで、貝類の肉付き・殻付着率・クリーミーさの低下など付加品質面でも影響が出るとされています。
(4) 流通・価格への波及
出荷の遅れ・小ぶり化により、小売・飲食店側では仕入れの変化が出ています。例えば、サイズが通常と異なり「大きいサイズだけ採れないため困る」という声があります。
一方で、供給量が減る・出荷時期がずれるということは価格上昇や品揃えの制約になる可能性が高く、消費者の手元にも影響が及び始めています。

