前回はマダイの採卵についてお話をしました。
さて、今回はふ化したあとの仔魚の飼育についてです。
産まれた受精卵は直ちに細胞、器官が成形されてゆき、およそ20℃弱の水温で卵を安置したときに48時間でふ化をします。概ね80%のふ化率です。
(写真01)
ふ化したての仔魚は2ミリ程度、単体で泳ぐことはできず、水に流されるように漂っています。
まだの仔魚の口は開いておらず、お腹の下にある卵黄由来の油球というものを持っており、これから栄養を摂ります。
(写真02)
ふ化後数日以内に油球の栄養分を全て身に吸収してしまいますが、油球があった場所に胃腸の消化器官、尾びれが形成され、魚の形に一歩近づきます。
そしてその頃に仔魚の口が開いて、自律的に餌を摂るようになります。
(写真03)
このブログで何度か登場している“シオミズツボワムシ”という125-315μm(1μmは0.001㎜)ほどの大きさの動物プランクトンが初期餌料で、朝と昼の2回に給餌します。
ワムシを飼育水槽に投入するとすぐに仔魚は食べ始め、顕微鏡で仔魚を観察するとお腹の中に沢山のワムシが詰まっていることが確認できます。
餌を順調に食べ始めた仔魚の成長は早く、ふ化後10日目には4ミリの体長で尾びれを支える骨の形成がみられ、胸ヒレの出現が確認できます。
(写真04)
さて、初期仔魚飼育はとてもナーバスなものでして担当者は非常に気を使う時期です。
ちょっとした油断から水槽内の仔魚が全滅ということがあるのです。
常に仔魚の状態を顕微鏡で観察をすることをはじめ、飼育水槽内の海水水質の解析、餌となるワムシの品質確認などありとあらゆることに気を配る必要があります。
(写真05)
順調に育っているときの仔魚は腸管にしっかりとしたヒダがあり食べたワムシが消化されていますが、調子を崩すと腸管のヒダが消失して食べたワムシが腸内で消化されずに生きていることがあります。
その状態では、仔魚の腸管内には夥しいほどの細菌(主にビブリオ)が蠢いているのが見られ、飼育水槽を見てみると力なく泳いでいる仔魚の姿や、給餌したワムシの食べ残しが多いなど危険な状況にあることが確認されます。
そんなときは直ちに抗菌・抗生物質を投与する必要があります。
現在は水産用医薬品の運用が法律で厳しく定められており、その魚種に対して承認された薬のみしか与えることができません。
一昔前、養殖とらふぐの表皮に付く細菌対策でホルマリンを使って、残留濃度が濃いことで大問題になりましたが、食用となる魚介類は安全なものでなければなりません。
資料参考
写真01 http://yamasakigiken.blogspot.jp/2013/10/no6.html
写真02 http://www.kanagawa-sfa.or.jp/madaisagyou.html
写真03 http://blog.goo.ne.jp/kanagawa-sfa/e/ba96471db5eb0924f8639fd0d23db9a2
写真04 http://blog.goo.ne.jp/kanagawa-sfa/e/3c4684cffea6961104c8af1da4ad2acf
写真05 http://blog.goo.ne.jp/kanagawa-sfa/e/9945198e9994ed0009bc01a4fb25d518
画像出典元:https://blogs.yahoo.co.jp/pepe_chef1988/27681558.html