平塚漁港の一角に、大きな水槽があり魚が泳いでいます。
魚を漁獲した漁師さん達が笑顔で「ヘイ、ラッシャイ!」と呼び込みをして、お客さんから訊かれる魚の質問を丁寧に答えています。
平塚漁港では毎月第四金曜日の午後に、「地どれ魚直売会」を開催しています。
獲れたての魚がお手頃の価格で手に入るという評判で大人気なこの直売会、平日日中にも関わらず地元や近隣の住民、そして飲食店のスタッフなどで大混雑です。
活きが良くビニール袋では魚が飛び出てしまうので、クーラーボックス持参で来る人も多いのです。
平塚漁港は目の前の相模湾は、アジ、サバ、カマス、シイラ、ブリ、カツオ、その他沢山の魚種が獲れる魚の宝庫なのです。
アジ、サバ、イワシなど浮魚の定置網や、シラス曳き網、ヒラメ、イセエビ刺し網漁が盛んで、神奈川県では三崎港に次ぐ大規模漁業を展開しています。
歴史も古く江戸時代には漁師の組織が出来上がり、相模湾での漁獲が行われ、獲れた魚は江戸へ運ぶ物流のネットワークも形成されました。
そんな歴史があり、地元経済の一役を買っている平塚漁港ですが、認知度が低く地元民でさえ漁港があることが知らないという人が多かったのでした。
平塚漁協の若い職員が、折角「湘南」という全国的に有名なホットスポットにありながら認知度が低く、地元の人々にももっと知ってもらいたいという思いと、地産地消で地元の経済がもっと活発になって欲しいという思いが平塚漁港の転換点となりました。
漁協職員の間で様々なイベントを計画して実行に移した中で、ヒットになったのが「ビーチdeさばき方教室」でした。
魚料理を楽しんでもらうには魚の捌き方を知る必要があり、捌き方の教室を実施して地元の人が気軽に魚の理解を深めてもらうことを目的に開催しました。
「湘南ひらつかビーチパーク」にて海水浴に遊びに来た若い女性、カップル、ファミリーを対象に捌き方を実演しています。
複数回実施しているうちにリピーターもつき、楽しんで参加者が魚の捌き方にチャレンジしています。
そして、神奈川県の「漁業者による直販支援制度」が開始されたことをきっかけに、県下の農協で漁師さんが直接魚の販売会を実施したことも大きなトピックになりました。
漁業者と消費者のお互いの顔が見える様になったこと、そして大漁で値が付かない魚や流通に乗りにくい魚も売り切れるほど人気の企画になりました。
街で販売して消費者の喜ぶ顔が嬉しい若い漁師さん達が中心に、それなら自分たちの浜で新鮮な魚を見てもらおうと、平塚漁港で直売会を行う運びになりました。
夜に漁に出て朝に入荷された魚を当日のうちに消費者の元へ販売する、その試みに一部の漁師さんからは「オレらは魚を獲るのが仕事で、売るのは仕事じゃない」という声がありましたが、やってゆくうちにそんな漁師さん達が気合十分、元気よく呼び込みやお客さんとの触れ合いを楽しみながら販売しています。
そして、ある漁師さんはお客さんに尋ねられたことが答えられなかったことが非常に悔しく、猛勉強の末「おさかな検定」を取得したとのことです。
お客さんが買った魚を「こんな風に料理した」と写真を見せてもらった漁師さんが、更に美味しい魚を食べてもらうために、漁の仕事も気合が入り、魚の取り扱いもかなり気を使う様になったとのことです。
地元の人たちが新鮮な平塚の魚を喜ぶ声が漁師さん達へダイレクトに聞こえるようになり、漁仕事のモチベーション向上にも繋がりました。
平塚漁協では直営の食堂がありますが、ここもまた常識破りな運営で大人気です。
開店前に100人以上も並んでいることがあります。
この「平塚漁港の食堂」については、また後ほど!