何とも興味を引く話ですね。でも、本当の話なんです。2015年11月15日の朝日デジタルを読んで驚きました。そこには「魚のタイムカプセル」なんてものも登場します。
マグロは近畿大学がクロマグロを養殖していますが、日本人はもっとたくさんのマグロをほしがっています。世界からは日本がマグロを獲りすぎるため、資源が減ってしまったなどといわれます。
でも、この研究によれば、世界(世間)を気にせずにマグロを手に入れることができますね。マグロだけではありません。絶滅危惧種の魚介類に明るい光が見えたのです。
ここは山梨県北杜市大泉という山の中です。そこには東京海洋大学の実験場があります。魚の研究はこの山の中で行われているのです。
どうして山の中か? 気になりますね。そのわけは山からの湧水が必要だからということです。湧水は水温が一定していて、水槽にかけ流しすれば魚は病気にかかりにくいということです。
この実験場では「ヤマメ」に「ニジマス」を代理出産させるという研究を行っています。人間では聞いたことがありますが、まさか魚にも代理出産があるなんてネ~。
その方法は、麻酔液の中に不妊処理したヤマメの稚魚を入れて眠らせます。眠った稚魚を顕微鏡の台に乗せ、針でニジマスの生殖細胞を注入します。
この作業は2~3分で終わります。オスはニジマスの精子を、メスはニジマスの卵子を作るようになるのです。これらが受精すればニジマスの誕生です。
実験場近くの渓流では、研究員が研究用のヤマメを獲って水槽で飼育管理をしています。
この実験場には絶滅危惧種の「クニマス」の約35匹分の生殖細胞を凍結した「タイムカプセル」があります。別の魚の腹を借りて、クニマスを産卵させようと考えているのです。こうして外来種に脅かされている古来種を守ることができるのです。
研究の結果、今月2日にはより簡単に保存・再生ができる成果も発表されました。それは、ニジマスを丸ごと1年間冷凍し、解凍後に生殖細胞を取り出し、後は前述した方法でヤマメの稚魚にこの生殖細胞を移植。そして「ニジマス二世」の誕生に成功しました。
研究成果は世界に広がり、アメリカやブラジル、フランス、スペイン、ノルウェー、タイ、インドネシアから技術を学びに来ています。
絶滅が危惧されている天然のクロマグロ。今年から幼魚の漁獲量は半減することが国際的な取り決めとなったようです。こうなれば近大のクロマグロへの期待度は一気に高まりますね。
東京海洋大学の技術をマグロに用いるべく、同じサバ科のマサバを使ってマグロの誕生に挑んでいます。マサバは低コストで育てやすいため、クロマグロを増やせば資源回復に役立つことになります。
一日も早くサバから生まれるマグロの誕生に期待したいですね。天然のクロマグロ、近大のクロマグロ、サバから生まれたクロマグロ、それぞれ違った味がするのでしょうか。
(出典元 朝日新聞デジタル2015年11月15日)