ウナギは謎の多い魚と言われてきました。川や沼で誰でも簡単に獲れる魚で、貴重なタンパク源として昔から親しまれてきた魚です。
近年、日本では天然のウナギが少なくなってきました。養殖しようにもどこで産卵しているのかもわかりません。ウナギの稚魚は少量だが獲れることが分かっています。
ウナギの稚魚は「シラス」と呼ばれ、鹿児島や四国の太平洋沿岸の河口付近で獲っているという情報が入りました。シラスは大変高価な値で取引されています。
ウナギを養殖で増やすためにもシラスが大量に必要となるわけですが、そのしらすが激減して入手が困難になっています。
今日ではシラスは「白いダイヤ」と呼ばれるようになり、密猟者が後を絶たないということです。自治体は警察をも頼み、密猟に目を光らせています。
1960年代にシラスウナギは年間漁獲量約230トンをピークに、近年では年間10トン程度まで減少しています。
養殖に必要なシラスウナギの量は年間1億匹に上る天然ウナギのシラスが必要と言われます。
2010年に養殖の中で、赤ちゃんウナギを得ることに成功したというニュースがありました。
また天然の日本ウナギが海洋で産んだ卵が発見され、これによって鰻を効率よく育てる環境を見つけることができるというニュースもありました。
広大な海の中でウナギが産卵する場所を見つけることは至難の業と思われていましたが、日本大学の塚本勝巳教授(海洋生命学)のグループが、今年(2015年)日本ウナギの産卵場所を突き止めました。
海洋調査船「なつしま」に乗り込み、グアムに近いマリアナ諸島沖9地点で、海水から日本ウナギの産卵を確認する「環境DNA」という調査手法を採用しました。
魚や両生類など水中生物は、表面の粘膜や排せつ物を通してDNAを体外に放出しているため、PCR法で増幅させ特定の遺伝子配列を手掛かりに種類を特定します。
今回、深さ400mで採取した1リットルの海水から、ニホンウナギのDNAを検出したといわれます。採取場所から半径10キロ圏内にニホンウナギがいたことが推定されました。
サケやマスの生態を研究している北海道大学でも、サケ・マスの回遊ルートになっているベーリング海で海水を調べたところ、サケのDNAを検出できたと報告しています。
また、北海道沿岸の水深300メートルで採取した海水から、約6000種類のDNAのデータベースにないものが数種類見つかったといいます。これは新種の魚介の可能性があるようです。この様に環境DNAは未知の生物を探すためにも使えると期待されています。
環境DNAをより手軽に使える技術の開発にも取り組んでおり、兵庫県立大の土居準教授は狙った生物のDNAが含まれていると、水の色が変わる特殊な試薬を開発中という。これが完成すれば調査するその場でDNAの有無を調べられるようになるのです。
環境DNAの技術は、使い方のアイデア勝負といわれます。世界中で注目されており、限りある海の資源を枯渇させることなく、守り育てる環境を作り上げてほしいものです。
ウナギの謎も解けて、安定したうなぎの供給によって、美味しいウナギが食べられる日を日本の消費者は待ち望んでいます。