海の歌舞伎役者…イシダイ


押し潰されたような独特の体形に、縦に黒の縞模様が鮮やかなイシダイ。
この縞模様が歌舞伎の「三番叟(さんばそう)」の烏帽子に似ていることから、市場関係者では縦縞がはっきりしている若魚を「サンバソウ」と呼んでいます。

余談ですが、三番叟とは豊作を願う祝言の舞のことで元々は能楽を構成する特殊な芸能の一つでしたが、歌舞伎や文楽、それらの舞台で欠かせない常磐津節や義太夫など広く現在でも日本の伝統芸能の世界に息づいています。
「とうとうたらり…」という力強い唄の出だしを正月に聞くと、今年もいいことに出会えるために頑張ろうと思う次第です。
私自身歌舞伎が好きで、それが高じて常磐津節を習っているため、このことを書き綴るなら5話ぐらい掛かってしまいそうな勢いですのでここまでにしておきます。
あくまでも主役はお魚ですからね!

磯釣りでポピュラーなイシダイを釣り上げたことがある方は多いのではないでしょうか。
北海道以南の日本沿岸、朝鮮半島南部や台湾に生息し、浅瀬の岩礁域が生活環境で、岩陰や洞窟に潜み、海底を泳ぎ回ります。
低水温、高水温の海水は好まず、日本付近の比較的温暖な海域(18~24℃)が棲みやすいとされていますが、温暖なハワイで漁獲された記録があります。
水温により個体の成長差があり、九州、四国、近畿、関東南部では7キロを超える大型個体が揚がりますが、小笠原諸島、佐渡島など上越、北陸、東北方面では観測されたことがありません。
固い丈夫なくちばしの様な顎で、甲殻類、貝類、ウニなどを噛み砕き捕食します。
英語では「Barred Knife jaw(縞のあるナイフのような顎)」と呼ばれています。

好奇心が旺盛な魚で、スキューバーダイビングで人が近づいても逃げないことがあり、ときに海水浴を楽しんでいる人をつついたりして遊びます。
この好奇心を利用して水族館では輪くぐりショーや、ゴルフボールを運んで穴に入れる行動展示を行っています。

イシダイは秋が旬の魚で、30~40センチの個体が一番美味しく、脂がほどよく乗っており、白身の旨みが濃縮されています。
ただし、気を付けなければいけないことがあり、大きい個体は味が落ちてしまい、プランクトンが産生する毒素に汚染された魚を食べることで眩暈や下痢の症状が出るシガテラ中毒の危険性があるので食用には向きません。
イシダイの美味しさを最も楽しめるのは刺身ですが、身が固く歯ごたえが強いので薄切りにしましょう。
釣ったばかりの魚は磯臭さが感じられることもあるので、氷水で「洗い」にするといいでしょう。
ポン酢や刻み小葱、紅葉おろしで食べると格別です。
他にも醤油漬けや、カルパッチョ、あら汁にするとイシダイの美味しさが楽しめます。
塩焼きにすると磯の匂いが強くなる傾向があり、好き嫌いが分かれるところです。

今日は海の歌舞伎役者イシダイのお話でした。
おあとがよろしいようで。

 

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