2015年9月29日、全日空系列の貨物航空会社ANA cargoは、CSN地方創生ネットワーク株式会社(以下、CSN社)と鮮魚流通、鮮魚輸出の提携を発表しました。
この日、羽田空港にてCSN社は空港内鮮魚仕分け施設「羽田鮮魚センター」をオープンしました。
以前、成田空港が扱う輸入魚について記事にしましたが、この「羽田鮮魚センター」は成田空港とは目的が全く異なります。
日本全国から漁獲された新鮮な魚介類を航空機で羽田に運び、物流プラットフォームとなる「羽田鮮魚センター」にて集約後、首都圏の飲食店にオンライン販売する試みです。
また、首都圏のみならず羽田から先の地方都市や海外都市へ直接空輸、またはANA cargoの拠点基地那覇空港を経てアジア各都市へ空輸輸出をするのです。
CSN社は第一次産業従事者や事業者の所得向上、地方創生を目指して日本各地の美味しい魚介類を「鮮度」や「高速輸送」などの高付加価値を付与して販売します。
そのためには航空機による輸送が不可欠となります。
また、農林水産業事業者が加工や流通販売を行い、幅広く事業展開をする第6次産業の事業者に対して支援やコンサルタントを行い、商品企画、開発、物流・販路開拓をネットワーク化することで生産者と消費者の架け橋になるとしています。
物流のカギとなるのがIT技術の積極的な導入です。
飲食店や小売店など利用者はCSN社のホームページ内の「羽田市場」に登録して買参会員(買参権の購入)になることで、希望の魚を羽田市場に介して漁師に注文する相対取引、セリ取引、オークション取引をすることができます。
セリ販売は平日午前11時、ツイキャスやUSTREAMを利用してリアルタイムで行う、面白い手法がとられているのです。
日々の取引は現金売りではなく掛け売りが中心になるので、取引決済は(株)ラクーン社のPaidサービスで行います。
また、利用者は魚がいつ、どこで、誰が、どの様に漁獲したのか、どんな鮮度管理をしているのかといった情報を知ることができ、漁師の声などを聞くことができます。
つまり、リアルタイムで「信頼された安全な食の情報」が付加価値として得ることができるのです。
羽田空港の拡張は、国内線や国際線の空路展開が拡がるといった実務的なことのみならず、水産物の様に「鮮度が命」の商品を高クオリティのまま大量に高速流通化が可能になり、都市と地方がお互いに求めるニーズを生み出す、新しいビジネスチャンスを掘り起こすことができたのです。
今回のANA cargoとCSN社の提携は、今後の日本の漁業の在り方を変える、一つのエポックメーキングな出来事だったと思います。
「温故知新」という言葉がありますが、古くから受け継がれてきた先人たちの漁業文化を尊い心を持って学び継承して、現代社会で必要不可欠なIT技術を取り入れることで更なる漁業の発展につながり、未来の明るい漁業の姿へ導くことでしょう。