醤油は大豆からしかできないわけではありません。一般に普及している醤油と呼ばれるものは、もともと穀醤と呼ばれていました。
日本には穀醤のほかに、古くから肉や果物で作った醤油がありました。醤油の種類を挙げてみます。
<穀醤>
米・麦・豆など穀物を発酵させて作った醤油。醤油、味噌の原型。
<草醤>
野菜・果物などを発酵させて作った醤油。漬物の原型。
<魚醤>
魚・海老などを発酵させて作った醤油。 塩辛の原型。
<肉醤>
鶏・獣の肉を発酵させて作った醤油。鮨(いずし・なれずし)の原型。
魚と塩を付け込んで作られる魚醤のうまさは格別ですね。魚の持つ動物性たんぱく質が分解されてできたアミノ酸と、魚肉の核酸を豊富に含むため、濃厚な旨味を醸し出します。
料理に塩分を加える働きがあり、ミネラルやビタミンも含まれています。
■日本の三大魚醤
秋田のしょっつる(塩汁)
能登のいしる(魚汁)
香川のいかなご醤油
が有名です。
<しょっつる>
秋田県の伝統的な魚醤ですね。以前はハタハタだけで作られていましたが、現在はハタハタ以外にいろんな魚で作られています。ハタハタやイワシを塩漬けにし、発酵させて採った汁です。「塩汁」とも書きます。
しょっつるの味は魚類の魚肉や内臓に含まれたいろんな酵素や微生物の働きによって、食塩の作用で魚醤特有の複雑な味が醸し出されます。
日本の食文化も時代の変遷により食を楽しむ方向に向かう中で、塩蔵食品や塩を用いた加工品が生活に幅広く浸透し、各地で独創的な加工品が時代や文化とともに磨き上げられました。
<いしる(いしり・よしる・よしり)>
能登半島で古くから作られている魚醤です。イワシやイカの内臓・頭・骨を塩漬けにし、発酵させた魚醤油です。骨や内臓を無駄にしない生活の知恵から生まれた「魚汁」です。
いしるは江戸中期から伝わる製法のようですが、正確な資料はありません。
能登の魚醤には2種類あり、一つは富山湾に面した内浦地区でつくられる真いかの内臓を使った「いしり」。もう一つは日本海の外浦に面した地区で作られる、イワシやサバを主原料とした「いしる」です。
それぞれの地区で昔から漁獲量の多かった魚介を原料にし、「いしる」は輪島港や蛸島港、富来福浦港といった漁師町で作られ、「いしり」は能登の小木港、宇出津港などの漁港町で作られています。
<いかなご醤油>
香川県の特産品です。生のイカナゴを百日ほど塩漬けにした後、その塩汁を紙で濾したもの。香川県では古くからの製法です。
昭和30年代までは作られていましたが、現在はほとんど見かけなくなりました。新鮮なイカナゴと瀬戸の天然塩を使った伝統の製法で作り上げます。
仕込みの後、熟成すると独特の香りがします。これは魚の蛋白質が分解されてできたアミノ酸を豊富に含んでいるためです。これによって濃厚な旨味が出来上がるのです。
魚醤はオイスターソースやうまみ調味料の代わりに使うことができ、醤油を使う時魚醤を少し足すことによって豊かな味が出せます。
料理に旨味を足したいときや、魚や肉の臭みを抑えたいとき、また、塩味や酸味を和らげたいときに魚醤を使うと効果があります。