昼前、三浦半島の三崎口から都内に向かう京浜急行の特急電車に乗ったとき、朝釣りを楽しんで帰宅する釣り人を見かけますが、手荷物のクーラーボックスからとても強い魚の匂いが漂い、車内中は非常に生臭いことがあります。
ですが鮮魚店や市場に行ったときは、魚の匂いは殆ど気になることはありません。
もっとも、そこに沢山魚があるということを認知しているせいもあるかも知れませんが、電車内でふいに漂う魚の匂いと何か大きな違いあるのでしょうか。
元来、魚は「腥物(なまぐさもの)」という異名がある位ですので、魚が生臭いのは当然ですが、ではあの独特の匂いのメカニズムは一体何なのでしょう。
過去に於いて魚の匂いというものは魚の脂、つまり高度不飽和脂肪酸によって魚体から発するとされていましたが、1960年代になり北海道大学の教授により魚の臭いのメカニズムが解明されたのでした。
まず「魚の臭い」には幾つかのグループがあるのです。
コイやフナなど淡水魚が生きているときに発する臭いと、傷み始めた魚から発する匂いでは全く性質が異なるのです。
コイを水槽に入れて飼育して、飼育水にコイの匂いを溶かし込みます。
そしてその水を煮詰めて濃縮したところ、洋がらしの匂い成分である“ピペリン”が分解するときに発する“ピペリジン”というものによく似ていることがわかりました。
更に研究を進めたところ、生きている淡水魚の体から発する匂いは“ピペリジン”であることが断定されました。
そして海水で生きていた魚が水揚げされたばかりのときは、活きのいい間は皮膚からわずかに“ピペリジン”を発します。
死亡してから時間が経つにつれて魚の死後硬直が解けたとき血生臭さが強く感じますが、このとき魚の身では繁殖した細菌より酵素が分泌されます。
この酵素は“トリメルチルアミン”という物質で、そのままズバリ「腐った魚の臭い」という表現がされています。
さらにトリメルチルアミンが増殖されると生臭さは一艘強くなり、今度は腐り始めるとスカトール、硫化水素、アンモニアなど非常に臭い匂いの元が発生します。
腐った魚の臭いの強烈たるや、思い出すだけで鼻が曲がりそうになります。
手に付いたとき、石鹸で洗ってもなかなかあの臭いは取れないんですよねぇ…。