海洋国が持つ共通の悩みとして、EEZ(排他的経済水域)内で無断違法操業をする海外の漁船の取り扱いがあります。
隣接する国々と操業個所や水揚げ量など漁業取り決めを締結しますが、履行されないケースが非常に多いのです。
最近では中国など大型巻き網船や虎網船で操業をした結果、アジとサンマが根こそぎ持ってゆかれてしまい、日本の水揚げ量が大幅に減ってしまう事態がありました。
取り決めを守らない船には拿捕などを含めた厳しいペナルティを課すことになりますが、国際問題に発展してしまうことは確実で、ときには国家間の友好条約の見直しや破棄、戦争う含めた紛争状態に繋がることもあります。
しかし、他国の漁船の違法操業を黙って見ている訳にはゆきません。
自国の水産資源を奪われるということは、領土を奪われるに等しいほどの経済損失を被る訳ですから。
最近、インドネシアでは違法操業した外国の漁船に対して大胆な行動を取っています。
インドネシアも日本と同様に豊かな水産資源に恵まれているのですが、長年近隣国の漁船の違法操業が野放し状態だったのです。
2014年秋にスシ・プジアストゥテイ氏という女性の方が同国の海洋・水産相に就任しました。
スシ氏は高校中退後、魚の行商を始めて水産ビジネスで成功しました。
右足首からすねにかけてフェニックス(不死鳥)の刺青がトレードマークです。
海洋・水産相に就任した手始めの仕事が、拿捕した違法漁船への取扱でした。
中国、ベトナム、フィリピン、タイなど様々な国々の漁船がインドネシア水域内で違法操業を行っていたのでした。
拿捕した漁船に爆薬を仕掛けて沖合に運び、爆破して海に沈めるという大胆な手法を取り、就任から2年弱の間に150隻も処理しました。
こうした毅然として国益を護る態度が、同国内では非常に好意的に捉えられており「豪傑」と呼ばれて親しまれているのです。
最近では、インドネシア監視線が中国の違法漁船を検挙して曳航していたところ、中国海洋監視船がやって来て体当たりしたのです。
その隙に違法漁船は逃走してしまいましたが、スシ氏は密漁をしたとして逮捕した中国人船長ら3人を起訴しました。
中国漁船を拿捕した場所はインドネシアの海域内であるのに関わらず、中国政府が「中国の伝統的な漁場」と主張して船員の早期解放を求めましたが、スシ氏は一歩も引かず逃げた密漁船の返還を求めました。
そしてこの密漁船を爆破して「みせしめ」にすることで、対外的に違法操業をした場合のメッセージを出し続けたいとしています。
中国漁船の世界的違法操業が問題になっていますが、それを真正面から戦いに挑んでいるのがスシ氏なのです。
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