何だかのっけから物々しいタイトルになってしまいました。
昔から新婚旅行の旅先で起きた様々なトラブルから、その後の結婚生活に重大な影響をきたすということはよく見聞きしたものですが…。
新婚旅行から帰国して“成田離婚”という言葉があったぐらいですし。
さて、今回はメキシコで起こったとっても悲しいお話、そしてそれが「魚」によって引き起こされた事件だったのです。
イギリスからメキシコ・カンクンへ新婚旅行で訪れた一組のカップル、二か月前に挙式を挙げたばかりでした。
とても幸せいっぱいで良き新婚旅行だった筈なのに、あるレストランに入ったことにより、その幸せは全て暗転してしまったのです。
この夫婦はカンクンで獲れたてのハタ料理を食べ、レストランを出て暫くしてから妻の体に異変が生じたのです。
極めて短い時間の間に意識がなくなり心肺停止、その後死亡してしまいました。
司法解剖の結果、妻の死亡原因は「毒による中毒死」ということが判明しました。
さてその毒ですが、食べたハタに原因があったのです。
彼女が食べたハタの身と内臓には、高濃度の水銀と「シガトキシン」毒が蓄積されていたのです。
体内に蓄積される毒素はフグの“テトロドトキシン”が有名ですが、このハタのシガトキシンはフグよりも更に強力な毒素であり、熱を通しても毒素は死滅しない神経毒なのです。
さて魚に蓄積される毒についてですが、そもそも魚には体内に毒はないものですが食物連鎖により体内に蓄積されてゆくのは皆さんご存じのことと思います。
小さい魚の餌となる動物プランクトンは植物プランクトンを食べて生活しますが、その植物プランクトンの中には有毒の種類(有毒渦鞭毛藻)があります。
そしてやっかいなことに海の動物の植物連鎖で最下部にあるため、自分より上位の魚が次々食べてゆく過程で有毒渦鞭毛藻の毒素は食べた個体の体内に濃縮されてゆきます。
日本沿岸では沖縄海域周辺で獲れたイシガキダイやバラハタ、オニカマスなどでシガテラ毒の確認がされていましたが、最近では海水温の温暖化により本州付近で獲れた魚でも(しかもブリやカンパチなども!)シガテラ毒が確認されています。
しかしながら全ての魚が危険という訳でもなく、一般的に流通している魚にはそのリスクは少ないです。
特に危険とされているのがサンゴ礁周辺で生息している魚ですので、夏の釣りに出掛けるときはこのことを頭の片隅に入れておきましょう。