マグロ船のコスト その1


戦後、遠洋マグロ業が今よりずっと盛んだった頃のお話です。
世界の海にマグロ漁に出ると、短い漁期で満船になって帰ってきました。
短期間で満船になるということは漁の経費が抑えることができます。
しかも漁獲の対象は魚価が非常に高いクロマグロ、船主は膨大な利益を手に入れることができたのです。
船主に雇われているマグロ船乗組員にも、その利益の恩恵を存分に受けられることができ、2航海マグロ船に乗り込めば家が建つと言われていたほどです。
学校を出た若者が一攫千金を夢見て、マグロ船の乗組員募集に殺到しました。
4月に日本の港を出航するマグロ船は希望に満ち溢れた、沢山の新人乗組員で賑やかでした。
そして、船主は常に新しい船を購入していました。
木造船から鋼鉄船になることで船の大型化や耐久性の向上、魚群レーダーや無線施設なハイテク機器の搭載、延縄の自働投網、巻き揚げ機械の導入、空調や風呂、個室など乗組員の充実した福利厚生に至るまで、最新技術の塊の非常に高価なマグロ船をいつも導入し続けても、すぐに建造費用を回収できるほど水揚げ量がありました。
新造したマグロ船は数年~10年程度で、中国や韓国、台湾をはじめアジア諸国に売却されてゆきました。
1970年代後半に入ると、これまで世界の海を駆けずり回り、マグロを満船になるまで釣り上げる日本のマグロ漁業黄金期に陰りが見えてきます。
自国海洋資源保護のため、200カイリ漁業水域または排他的経済水域の設定が世界的な流れとなるのです。
当初、マグロは高度回遊魚のため経済水域の漁獲制限魚種の対象外でしたが、1980年に入りマグロの資源量の減少が無視できないという欧米先進国の指摘により大西洋でのマグロ漁禁止条約が締結されます。
その後も世界各海域でマグロ漁の禁止または制限をする動きが続きました。
漁獲量が減るにつれて運営の経費やコストが跳ね上がり、マグロ船主は厳しい会社運営を強いられます。
マグロ漁から撤退して廃船にする船主が多い中、一方で何とかこの状況に活路を見出そうとする船主もいました。
航海に掛かる費用を減らすため、海外に水揚げしたマグロの転載など流通拠点や、船の整備などを行うハブ港を設けてコストの削減に乗り出します。
船員についても人員数や配置の適正化、航海や操業の自動化、一航海の期間短縮、海外で乗組員の交代など人件費の見直しを進めるのでした。
画像出典元:http://suzumeketaro1.blog57.fc2.com/blog-entry-1733.html

 

マグロ船のコスト その2

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