私たちが海外旅行に出掛けるとき、絶対必要なものはパスポートですね。
人が異なる国家間を移動するとき、パスポートが身分証明となります。
日本及び目的地の入国管理局でパスポートの情報を基に、出発地と到着地の空港で出入国審査をして、携行品の検査や免税申告は税関で行います。
さて、日本のEEZ(排他的経済水域)を超えて、公海や海外の領海で操業を行う遠洋漁業の漁師は国際的にどんな扱いになるのでしょうか。
気になるので調べてみました。
まず、遠洋漁業に限らず漁船にのる漁師は全て「船員」として扱われ、国交省より「船員手帳」が発給されます。
船員手帳には自分の本名、生年月日、国籍、本籍など身分証明になる事項が記載されています。
その他、漁船を運営する会社との雇用契約、機関や甲板など仕事の役職、健康診断、乗船履歴、資格証明などが記載されます。
遠洋で操業して、魚の積み込みや休息などで外国の漁港に入港するときは、原則として船員手帳がパスポートの代わりになります。
入港が許可された漁港で出入国審査官が入国審査を行い、晴れて上陸許可になったときは「入国許可証」を発効します。
日本では遠洋漁船の基地港に入国管理局の出張所や税関が設置されています。
この入国許可証はパスポートと同じように渡航先の国内を自由に動き回れるものではなく、上陸許可対象が港周辺の都市に限られたり、国によっては政治的理由で上陸そのものが許可されない場合もあります。
また、途上国の漁船に乗り込んでいる船員が寄港地で仕事を放棄して、密入国状態で船から脱船する人々(ジャンプシップ)が後を絶たない傾向にあります。
2001年の米国同時多発テロ以降、出入国のセキュリティは厳しくなり船員手帳のみでは、寄港先での行動がかなり制限されています。
また操業の状況によって予定と異なる国の漁港へ向かうなど、寄港地が定かではないことや、漁師が仕事交代のときは寄港地で乗船または下船をして、航空機で母国や漁船寄港地に移動するため、漁師は船員手帳とは別にパスポートを所持しています。
余談ですが、船員の航空機移動は通常は設定されていない片道運賃の割引や、手荷物など優遇措置が取られています。
予約記録に「SEAMAN」と適用を入れて、空港のカウンター係員に船員手帳を提示する必要があります。
入国審査以外にも税関の検査を受ける必要があります。
漁船を利用して、または偽装して違法薬品やけん銃などの持ち込みや受け渡しが後を絶ちません。
地方漁港では時折、大量の覚せい剤やけん銃などが押収され、特に海外籍の漁船が運んでくるケースが多いようです。
そのため、税関は海上保安庁(海外では沿岸警備局など)と合同で、航空機を使って漁船の動向を監視しています。