興味あるタイトルでテレビ大阪が2時間のスペシャル番組を放映しました。アメリカとスペインのイカ漁師をゲストに招き、日本のイカの美味しさの秘密に迫りました。
漁獲方法、流通方法、調理方法についてゲストに見学させて、自国との違いを浮き彫りにしていました。
まず漁獲方法の紹介ですが、イカを弱らせない漁の仕方として紹介しました。
日本のイカ漁は鮮度を最優先し、生きたまま市場に届ける努力をしています。
取材場所は青森県三沢市の三沢漁港です。第3種漁港で主な魚種はイカ類、サケ、貝類、ヒラメ、カレイなどです。
イカ釣り漁船には自動イカ釣り機が備わっており、200mの糸に35本の疑似餌が付いており、魚影探知機でイカの居る場所に仕掛けを下します。
イカが疑似餌に取りついた状態で、仕掛けは巻き上げられます。海中から上がったイカは、自動的に疑似餌から離され、船上に落ちます。
イカは人間の体温で弱ってしまうほどデリケートな生き物です。吊り上ったイカは人の手に触れることなく船底に集められます。
■イカの鮮度を保つ工夫
一カ所に集められたイカを、発泡スチロール製の容器に、氷を敷き、その上に25匹または30匹をきれいに並べ、海水をかけて蓋をします。
この容器に入れる時、漁師さんはイカを片手に5匹、両手で10匹持ってイカの頭を壁にたたきつけて箱詰めしていました。理由は頭にショックを与えるとイカの耳が体に巻きつく習性を利用しているのです。このため容器には大変きれいに収納することが可能になります。イカは生きたまま大人しく容器に収まっています。
■水揚げ
漁港に着くとすぐにベルトコンベヤーで容器を陸あげします。コンベアからセリにかける場所に容器を並べ、そのまま競りが始まります。仲買人は入札のために一度だけ発泡スチロール製の容器のふたを開けてイカの状態を目で確認します。
そのままセリ落とされ出荷先が決まり、直ぐに待機しているイカ活魚車に運ばれます。そこで生鮮イカと活けイカとに分けられます。
活けイカは生きたまま運ばれるため、トラックの水槽は天然海水が入っていて、中では海流も作られ、輸送中は振動を少なく、スピードも気を付けながら輸送されます。
この様に鮮度を最重要視しながらイカの漁獲から輸送までを、時間をかけずに鮮度を保つために凝らされた工夫の数々を見てきました。
これだけでもゲストの驚きと感心は大変なものでしたが、さらに高度な活イカの輸送方法も紹介され、ここまでやるのかと驚いていました。
それは専用のビニール袋のようなものに、イカを入れ、海水と酸素を注入して生きたままのイカを店頭に届けることでした。後で調べてみると、これはロケットと呼ばれる特殊な専用容器だそうです。
実際テレビで放送していましたが、狭い専用容器の中で、イカがストレスのため墨でもはいたら大変です。そのために容器に移す時、イカの目をふさいで両手で持ち上げ、海水の入った容器に入れ、最後に酸素を注入して封をする。
この時人の手は氷で冷やしてイカをつかんでいました。人の体温でイカが弱るのを防ぐためです。
この方法なら24時間は生きた状態で運ぶことができるのです。輸送中の揺れなどを最小限に抑え、上から氷を入れて水温を下げ、イカの動きを少なくさせて輸送する方法をとっていました。
24時間後、容器からイカを出して海水に戻すと、勢いよく泳ぎまわっていました。
この状態でお店に届けられ、お客は新鮮な活き造りを楽しむのです。
スペインではイカを生で食べる習慣がなく、伝統のかご漁で獲れたイカはそのまま陸揚げされ、冷蔵または冷凍されるようです。従って調理では必ず火を通した料理になるようです。
アメリカではまき網漁で漁獲したイカを、水揚げしてすぐに冷凍するようです。アメリカも殆ど生で食べることがないようです。
24時間ならスペインでもアメリカでも活きたイカを届けることは可能です。
ゲストの人も今回の見学で自国に導入できる部分がたくさんあったのではないでしょうか。
活きたイカの素晴らしさは充分理解できたようですが、後はこの素晴らしい食材をいかに料理するかということにかかってくるでしょう。
日本の調理技術は素晴らしいものがあります。しかしこの技は一朝一夕に習得できるものではありませんね。