前回では味覚について「甘」「苦」「酸」「塩」、そして「旨」と5つの味覚があることをご説明いたしました。
そして旨味という味覚はどんなものか、もう少し掘り下げてゆきたいと思います。
2000年にヒトの舌には「旨味」を受容するレセプターがあることが判明されました。
日本では古くより食事の味わいには旨みという深みがあることを知っておりましたが、素材の味付けで料理が決まるとしていた欧米の人々には、旨みという概念は馴染みが薄いものでした。
今では世界的に旨み成分があることを知っており、「savory(肉料理などの風味がある)」、「brothy (肉などの煮汁の風味がある)」など様々な表現があります。
そして何より世界的に旨味は「umami」という言葉で認知されているのです。
旨味についてですが、基本的に「グルタミン酸」、「イノシン酸」、「グアニル酸」という成分物質によって構成されております。
それ以外にもハマグリやシジミ、アサリに多く含まれている「コハク酸」という成分など、旨味を構成する物質は多数あります。
ようやく、ここからサカマブログの本題です…これらの旨み成分と魚について調べてみたいと思います。
魚の身の旨さは概ね「グルタミン酸」と「イノシン酸」で構成されています。
この二つは「アミノ酸」を構成しているものですが、2月18日に掲載した「魚と鼻」記事をご覧になった方はピンと来るかもしれません。
魚は水中のアミノ酸の濃度によって、嗅覚や味覚の情報を受け取ります。
さてアミノ酸と密接な魚ですが、締めたての鮮度のいい魚の身には実はほとんど「グルタミン酸」や「イノシン酸」などの旨み成分は含まれていないのです。
魚が旨味を増すこと、これは熟成をするためなのです。
魚を締めてしばらくすると細胞に酸素が供給されなくなるため、体内に残された酵素がタンパク質を分解しますが、この過程でグルタミン酸が生成されます。
そして筋肉中のATP(アデノシン三リン酸:魚の筋肉を動かすエネルギー源)が分解される過程でイノシン酸が生成されるのです。
この様な過程の成分分解を「自己消化」といい、自己消化が進んで旨み成分が生成されることを「熟成」といいます。
熟成してそのままにしておくとイノシン酸など旨み成分が分解され、イノシン(イノシン酸ではありません)、ヒポキサンチンという成分が生成されます。
この状態を「腐敗」といいます。
もっとも腐敗して食べられないものは、雑菌などが繁殖している状態ですが。
この腐敗進行を科学的に示す数値を「K値」と呼び、食べられるかどうかの指針となります。
K値は20%未満で刺身など生食に適している、40%未満で寿司ネタに使える、60%未満で加熱用食材に適しているとされており、60%以上は食用には適しません。
熟成が進みイノシン酸がピークで、K値が低い状態が一番美味しくいただける状態です。
まだまだ旨味について綴りたいことがいっぱいありますが、これ以上続けると家政科の授業になってしまいます…ただしご要望があればその限りではございません(笑)
旨味成分についてもっと知りたい方は「日本うま味調味料協会」のホームページをご覧ください。
画像出典元:http://deai19.com/?cat=4