漁獲の効率化と資源保護のため漁業にIT導入


日本の海域では水産資源が確実に減ってきました。かってのニシン漁のように、ある時期からぱったり鰊が獲れなくなったことがありましたね。

あのころ鰊はいくらでも獲れて、未来永劫鰊景気は続くものと思った人もあるでしょう。鰊が不漁になってからは悲惨でしたね。

資源を守りながら漁業をおこなわなかったことへのしっぺ返しでしょうか。如何に広大な海とはいえ、資源は枯渇してしまいました。

イカやマグロなど多くの魚介は、漁師さんの勘と経験と腕によって漁獲量の決まる世界です。豊漁が続けばいいのでしょうが、いつも同じようにいかないのが現実です。

北海道の函館では、2000年4月に「はこだて未来大学」が設立されました。地元の自治体が共同で設立した公立大学です。

街全体をキャンパスに見立て、地域の課題をITで解決を目指す実践的カリキュラム導入が特徴です。マリンITと呼ばれる分野で、世界に類を見ない漁業分野のIT化に取り組んでいます。

この大学に和田雅昭教授がおられます。和田さんは大学卒業後地元の著名な「自動イカ釣り機メーカー」で技術者として活躍されました。

このころイカ釣り機は相当普及し、オートメーション化が進んでいましたが、ただイカを獲るだけで、漁師さん各自がデータを抱え込んだままでした。

自ら全国各地の漁船に同乗し、漁業現場をIT化させる必要性を痛感しました。大学教授に転身しマリンITによって「強い漁業」を作ることを目指しています。

和田さんはイカ漁に注目しました。1996年に全国のイカの漁獲量は最盛期を迎えました。2015年の現在当時の半分以下に激減しています。

イカ釣り船にはほぼすべて自動イカ釣り機が搭載されています。集中制御によって1人で10数台のイカ釣り機を操作もできます。運転状況はモニターで確認でき、漁獲量も一目でわかります。

和田さんはこれら貴重なデータが有効なビッグデータとして活用されていない点に注目しました。前述したように個人が抱え込んだままのデータです。

このデータを集約し分析することで、どんな漁場の水深で、何度くらいの時にどれだけの漁獲があったのか。これらのデータから効率的な場所や時間が推測できる可能性が高まるのです。

しかし漁業は個人経営が多く、個人の勘や経験、能力が収入源となるため、情報の共有化などとんでもない。他人にノウハウを披露するなどもってのほかと考える漁師さんが多いのです。

冒頭でものべましたが、日本の海域での水産資源は確実に減っています。かってのニシン漁の二の舞にならないように、資源を守りながら漁業をおこなわなければいずれ枯渇してしまい、漁業全体が衰退化してしまうことになりかねません。

なんとしてもIT化による資源保護と効率化を、漁業者に理解してもらう必要性があるのです。和田教授の地道な活躍で徐々に地元漁業者の信頼が得られ、IT化の必要性を説き続けてきました。

GPSだのアプリだのと70歳を超える漁師さんには、うっとうしく聞こえたことでしょう。

しかし誰でも使えるアプリを開発し、「なまこ」の資源と保全をIT化で実験し、データの集約の必要性や、漁業の効率などが実証されました。

あの「大間のマグロ漁師」からもIT化したいと相談が入るようにもなったようです。当然全国各地の漁協や行政からも注目され、相談が入ってくるようになったようです。

この記事は2015年5月14日付東京IT新聞記事を参照しています。

 

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