栽培漁業を知っていますか?


日本の国土面積は38万㎢と世界で61番目の国土の大きさですが、領海と排他的経済水域(EEZ)の大きさは世界で6番目の大きさなのです。
日本列島以外に数々の離島が存在しており、広大な領海と排他的経済水域により、我が国には潤沢な海洋資源があります。

戦後、日本の高度成長期とともに漁業の発展も進み、漁船の高性能化や漁法の機械化により、漁獲量が大幅に増加しました。
魚が食生活の主流である我々は、四季折々の季節の魚をいつでも美味しく堪能できるようになりました。

しかし漁獲量の増加に伴い、限りある海洋資源が枯渇、またはその危機に直面します。
そのため、海洋資源の回復と維持が研究されます。
1960年、瀬戸内海の伯方島で栽培漁業の試みが始まります。
瀬戸内では高価格魚が減少していたため、それらの魚種の再生が検討されていました。

魚類、貝類を人為的な設備、施設で育成した後、自然に戻すことで水産資源の維持を図る新たな手法、これが栽培漁業といい「つくる漁業」呼ばれます。
国立研究法人水産総合研究センター(旧・財団法人日本栽培漁業協会)が栽培漁業をはじめ、水産業に関する技術向上の研究を行っています。
そして沿岸地域の都道府県は、地方公共団体が水産試験場を設置して、各々地域海域での生息に適した魚貝種の生産・育成研究が行われています。
(例えば北海道のエゾアワビ・マツカワ・ハタハタ、鹿児島のフクトコブシ・カンパチなど)
生産・育成手法が確立されて量産ベースになった魚種は水産試験場、または第三セクターの栽培漁業公社の手によって栽培漁業の本格的運用が行われます。

栽培漁業は魚類、貝類の採卵から孵化、初期仔魚サイズの育成を種苗生産と呼びます。
初期仔魚には「シオミズツボワムシ」という汽水種の動物性プランクトンを餌にします。
この「シオミズツボワムシ」は生産、増殖手法が確立されており、日本の種苗生産機関では必ず使われています。
この時期はちょっとした環境の変化で仔魚の大幅な歩留まりの減少や疾病など、生産担当者が一番気を使います。
常に水槽を泳ぐ仔魚の動向や、顕微鏡で仔魚の餌の消化状況や細菌の有無など確認します。

種苗生産時期を過ぎた魚種の育成を中間育成と呼びます。
中間育成は稚魚が自立して摂餌行動を取るようになるので、初期飼育の水槽から専用の水槽に移して放流サイズになるまで飼育します。
この頃になると、仔魚の様な大幅な歩留まりの減少を引き起こす疾病のリスクは低くなります。

放流サイズに達すると、自然界で自立して生存するほどに成長しています。
育成を行った水産試験場や栽培漁業公社は県内の沿岸水域にて、各市町村や漁協の協力のもと種苗放流を行います。
放流する種苗にはタグなど取り付け、鰭の切除など標識をすることで、成魚になって水揚げされたときに放流効果の実証ができます。

日本国内では実に様々な魚や貝が放流されているのです。
もし釣りに出掛けて、タグや標識が付いている魚が釣れたときは近くの栽培漁業機関に連絡をしましょう。
放流効果データの蓄積に大変役立ちます。
そして、まだ小さいサイズの魚であればリリースすることを忘れずに。

画像出典元:http://akita-saibai.com/fish.html

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