夏のおいしい魚には「車海老」があります。中でも車海老は味の良さでは定評がありますね。「姿 伊勢海老、味 車海老」といわれるほどのおいしさです。
車海老が出世エビといわれることはご存知でしたか?魚河岸では車海老の重さが30g以下のものを「巻」、その中でも小さいものから順に「小巻」「才巻」と分けられます。それ以上のものを「車」と呼び、順に「車」「大車」と呼ばれるようです。成長とともに呼び名が変わるのですね。
天然ものの車海老の旬は6~8月、養殖物は12~2月といわれます。成長したクルマエビは体長が15~20㎝ほどです。
小さな海老は味がよく天ぷらに、大きなエビは塩焼きやエビフライに適しています。
車海老には栄養素がいっぱい詰まっています。
・豊富に含まれるアミノ酸のうち、グリシン、アルギニン、プロリン、リジンの4つのアミノ酸が3割を占めています。肌の水分や油分、弾力を保つコラーゲンの主原料です。
・殻にはキチンという不溶性食物繊維が含まれており、便秘の予防や大腸がんの予防、コレステロールを体外に排出する作用があります。
・ビタミンEが豊富で、活性酸素を抑える抗酸化作用があり、体内の不飽和脂肪酸の酸化を防ぎ、動脈硬化や心筋梗塞など生活習慣病予防に効果があります。
・タウリンが脳卒中や高血圧、心臓病の予防や疲労回復、視力回復に効果を発揮します。
車海老は夜行性で、昼間は砂の中に浅く潜っています。夜になると泳ぎ出てゴカイや貝類を捕食します。
車海老の生産量第一位は沖縄県です。沖縄県の車海老は陸上のいけすでの養殖と、遠浅の海岸を堤防で仕切って、自然の干満を利用した海水交換を行う築堤式の2種類があります。
エビは縁起物として昔から重宝されてきました。エビの姿を老人に見立てて、「海老」の漢字の由来となったといわれます。
お中元などの贈り物にも車海老を産地直送品として人気がありますね。
クルマエビをおが屑にくるんで地方発送されます。届いた箱を開けるとおが屑の中にクルマエビが生きたまま届いているのです。貰った方は何とも言えない嬉しさがあります。
刺身にしたり、踊り食いにしたり、その夜は車海老の話題で盛り上がること間違いなしですね。贈り物といっても天然物とは限りません。むしろ養殖物のほうが多いと思われます。
厳密に調べれば味の違いはあるのでしょうが、食べ比べない限り違いは殆どないようです。
見た目も美しく、食べてもおいしいクルマエビですが、俳句の季語には「夏」となっています。しかしクルマエビを詠んだ俳句が見当たらないのはどうしたことでしょう。
スーパーなどの店頭には、車海老は一年を通して見かけるように思います。天然物と養殖物が、季節感を薄めてしまったのでしょうか。