蛸と言えば明石のタコが有名ですね。潮流の激しい明石海峡で、豊富な餌に恵まれて、すくすく育った立派なマダコ。足が太くて身が引き締まり、歯ごたえは抜群の明石ダコ。瀬戸内海にはエビやカニが豊富に生育しているため、タコの餌としては贅沢すぎるほどいい食環境にあります。
明石のタコは一時絶滅の危機があったようですが、地元の漁協や漁師さんが産卵用のタコツボを仕掛けるなどして、明石ダコを守ってきた経緯があります。今では漁獲量も安定してきたようです。
タコの旬は夏です。5月から7月が甘みが強く歯ごたえもしっかりして、大変おいしくなる時期です。明石海峡で水揚げされるマダコは、漁獲量日本一を誇っています。
明石には独自の「昼網」という流通ルートがあり、明石海峡で昼網で漁獲された魚介を、11時30分からセリにかけ、仲卸を通さずに直接店に届けられる独自の方法をとっています。
明石港のすぐそばに「魚の棚商店街」という鮮魚店や飲食店が軒を連ねる商店街があります。歴史は古く、江戸時代から鮮魚店が並んでいたようです。独自のルートでスピーディに新鮮な魚介を提供することで、地元から歓待されています。
関西では夏至から11日目の半夏生に、タコを食べる習慣があります。「土用のタコは親にも食わすな」と言われるほどおいしい時期です。「秋ナスは嫁に報わすな」と同じことわざです。
蛸の生涯は意外と短いようです。マダコは1年~1年半、飯蛸は1年、ミズダコは4年の寿命といわれます。こんなに短い生涯に結婚して産卵するのです。産卵は夏から初秋にかけてなされますが、海藻の根元や岩場の窪みなどに約2万個もの卵を産み付けます。
卵は房状になっていて、別名「海藤花(かいとうげ)」と呼ばれ、吸い物や酢の物に利用されます。卵は約25日で孵化しますが、親ダコはこの間絶食で過ごし、やがてその生命を絶ってしまいます。明石海峡でのマダコの漁法は、60%が蛸壺漁です。
蛸の料理は、刺身、てんぷら、タコの柔らか煮、タコめし、寿司、酢味噌和え、おでん、タコ焼き、酢の物などがあげられます。どの料理を見てもおいしそうなものばかりです。
子供のころ母から聞かされたことですが、タコの足先は、毒があるため食べてはいけないと教わり、調理の時、足先を切り取って捨てていたことを思い出しました。結婚して妻にそのことを話すとそんなことは知らずに、すべて食べていたということを聞いて驚きました。
今この記事を書きながら調べてみると、毒ではないが切り捨てるとありました。料理人の書いた記事を読んでみると、タコの足先は見た感じがよくないため、盛り付けにも気になる。硬くてうまくないため切り取るとあります。
別の意見は、タコは足先でいろんなものに触れるため、細菌がついて汚いから切り捨てるとあります。決して毒があるからという意見はなかったようです。
日本では兵庫県の明石市の蛸が有名ですが、北アフリカのモーリタニアでは、自国でタコを食べる習慣がないのですが、日本向けにマダコを漁獲して日本に輸出しています。日本の市場に出回っている蛸の大半は輸入蛸が占めているようです。
「とろ箱に 脚のぞかせて 蛸せらる」 馬場 秀
「たこ壺や はかなき夢を 夏の月」 松尾芭蕉が明石の蛸壺漁を見て詠んだ句です。