さて、日本で主に食されているウナギは“ニホンウナギ”という種ということと、その生息域について前回綴りましたが、今回はその稚魚である“シラスウナギ”について綴ってゆきたいと思います。
まず、ニホンウナギは海洋で産卵が行われます。
卵から孵化した稚魚はその後、河口付近の汽水域から淡水の河川で成長をします。
孵化した仔魚はレプトケファルス(葉形幼生)と呼ばれるもので、柳の葉のような形をしています。
この成魚と異なる体型は、産まれたばかりで遊泳力が備わっていない仔魚が海流に乗って浮遊移動するために適応されています。
仔魚・稚魚期はプランクトンの排出物や死骸といったマリンスノーを餌としています
その後、レプトケファルスは成長して稚魚になるときに、葉っぱのような平たい体型から成魚と同じ円筒形に変え半年から一年の間にシラスウナギとなります。
シラスウナギの体型は成魚に似ているものの、体色はほとんど透明で全長は5 センチ程度です。
シラスウナギは黒潮に乗って生息域のアジア沿岸に辿りついて川を遡ります。
遡った川で昆虫・魚・甲殻類を捕食して成長し、5年から十数年という極めて長い時間をかけて成熟してゆきます。
その後成熟したウナギは川を降りて再び海に向かい、産卵場へと向かいます。
長らくニホンウナギの産卵場所は突き止められず、外洋域の深海ということだけは分かっており、正確な産卵場は長年に渡って不明でした。
2006年2月、元東京大学大気海洋研究所教授でウナギ研究の第一人者である塚本勝巳氏が率いる研究チームが、産卵場所はグアム島やマリアナ諸島の西側にあるマリアナ海嶺のスルガ海山付近にあることを突き止めました。
この付近の海域で孵化してから2日程度の仔魚を多数採集することに成功し、遺伝子を調べた結果ニホンウナギと判明しました。
そしてその2年後の2008年夏、水産庁と水産総合研究センターの合同調査により成熟したニホンウナギの親魚を捕獲することに成功しました。
水深2,000メートル以上の西マリアナ海嶺にて、数百メートルの長さのトロール網で行い、捕獲した個体のうちオスは成熟した精巣、メスは産卵を終えてしぼんだ卵巣が確認されています。
さらに付近の水深100メートル前後の海中では孵化後数日が経過した仔魚を26尾捕獲することに成功しました。
その後翌年の2009年には直径1.6ミリの受精卵が水中160メートルで漂っていることを確認、2011年には目合が非常に細かいプランクトンネットを用いてニホンウナギの卵を採集することにも成功しています。
画像出典元:http://wasa-bi.com/topics/564