鰈(かれい)


白身の魚でおいしい魚に鰈があります。鰈は4月から10月が旬と言われ、夏においしい魚です。全国に生息していますが、北海道、福島、千葉、兵庫、島根などが漁獲量の多い漁場です。

鰈によく似た魚にヒラメがあります。とてもよく似ていてどちらがどちらか判らない時があります。昔から見分け方で言われているのは、「左ヒラメ、右カレイ」といわれ、両者の腹を下に向けてみた時、頭が左に来て、目も左というのがヒラメ。頭が右で眼も右は鰈という見分け方が一般的な見分け方です。例外もありますが・・・。

両方とも卵から孵化した稚魚の時は、体の両側に目が一つずつあります。稚魚の時には海中を浮遊して生活するのですが、この間にヒラメの稚魚は右目が徐々に背中に移動しはじめるようです。鰈の稚魚も左目が徐々に背中のほうに移動するといわれます。

両眼が移動完了後は海底での生活に移行します。目の移動には1か月半から2か月半の時間がかかるようです。海底の砂礫の上で生活するため、両目は上に付く必要性があったのです。自然の力は不思議ですね。

鰈はふつう右側に両目があるのですが、例外もあるそうです。ヌマガレイは日本産の場合左側に目があり、アメリカ産やアラスカ産は右側に目があることが多いようです。

鰈や鮃の目の偏りを研究した東北大学の鈴木徹教授によると、目が偏る現象は、遺伝子によるものであることを突き止めました。最初に起きるのは脳のねじれです。

ヒラメも鰈も生まれた直後は目も体も左右対称ですが、20日~40日後に目が左か右に偏り始めるようです。鈴木教授は右目と左脳、左目と右脳をつなぐ視神経のX型の交差部で、脳にわずかな歪みが生じることを発見しました。そこから脳全体のねじれが進み、目の位置が片方にずれていくことを確認されたようです。

鰈の種類は日本の近海だけでも30種類以上あるようです。種類によって旬は違うようです。
・マガレイは刺身や煮つけ、から揚げや一夜干しなどに利用されます。
・マコガレイの旬は初夏から晩秋までと長い。刺身や煮つけ、から揚げや塩焼き等がおいしい魚です。
・クロガシラカレイは太平洋北西部、千島列島、オホーツク海南部から日本の北部の沿岸で漁獲され、北海道では釣り人に人気のあるカレイです。最大50センチにもなります。
・ヌマガレイは体長は30センチほど。目が左側にある種類です。汽水域や淡水域にも入り込んで生息することもあります。

島根県浜田市では、鰈が市の魚に指定されています。浜田漁港では鰈の水揚げ量は日本有数の漁港です。隣の鳥取県境漁港、その隣の兵庫県香住漁港も鰈の水揚げが多い港です。

鰈にもブランドがあります。大分県別府湾北岸に日出(ひじ)町というところがあります。そこに日出(ひじ)城祉があり、その海域一帯で獲れる鰈を「城下かれい」と呼んでいるのです。マコガレイの異名です。

この付近では海中から真水が湧き出ており、海水と真水が混じる汽水域となって、海水性・淡水生のプランクトンを餌に成長する城下鰈は、肉厚で癖がなく、味は淡白で上品な高級魚として知られています。春から初夏くらいが特に脂がのって身も厚くおいしい時期です。

他の海域で漁獲されるマコガレイとは区別されて、「城下カレイ」と呼ばれています。江戸時代には武士しか食べることができず、将軍への献上品として珍重されていました。

「海中に真清水湧きて魚育つ」  城下カレイを賞味した高浜虚子の句です。

 

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