前回はイソギンポを使った実験で、潮だまりに生息する種と岩の裂け目に生息する種では。同じ生息域で生活するもの同士求愛行動を行うことがわかりました。
そのメカニズムを究明するカギは視覚ではなく“嗅覚”にあったのです。
同じ生息環境で生活するメスが入っていた水槽の海水の中にオスを放り込んだとき、そのオスはたちまち興奮してしまいました。
何だか好きな女の子の部屋に入ったときに、そわそわしてしまう少年時代を思いだすなぁ。
そして次の実権です。
4つにイソギンポを分類しました。
①求愛活動をしたことがあるアナギンポ(この名前は便宜的名称です)のメス
②現在求愛行動中のアナギンポのオス
③求愛活動をしたことがあるシオダマリギンポ(この名前も便宜的名称です)のメス
④魚が入っていない海水
実験は②の水槽に①、③、④の海水を注入してオスの反応を見てゆきます。
また上記の①から④を逆の条件にした実験も行っており、以下の通りです。
①求愛活動をしたことがあるシオダマリギンポのメス
②現在求愛活動行動中のシオダマリギンポのオス
③求愛活動をしたころがあるアナギンポのメス
④純海水
さて最もオスが強い興奮反応を示したのは①の海水、つまり同じ生息環境にあるメスだったのです。
一方、③の違う環境下で生息するメス、④純海水に対しては全く反応を示さなかったのです。
このことからイソギンポのオスは特定のメス、同じ環境下で生活しているものに対してのみ強く刺激されるのです。
実験を続けてゆくうちに注水がパターン化されると、魚は水の流れを感じ取ってしまう学習をされる恐れがあります。
最も興奮する①の海水を水槽の左側に繰り返し流してみると、オスは数時間のうちに水流を流すだけで反応するようになりました。
そこで今度は④の純海水を水槽の左側に流すと、オスは左側に向かいました。
その次に再び②の海水を今度は水槽の右側から流してみると、匂いのする右側へ向かいました。
水の流れに対する学習ができても、同種のメスの匂いがしたときはそちらに向かうことがわかります。
“シオダマリギンポ”も“アナギンポ”も、つまりイソギンポのオスはメスが分泌する性フェロモンによって興奮して、求愛行動の結果めでたくつがいになることができるのです。
画像出典元:http://www.mune.co.jp/nekton/file/isoginpo.htm