さて前回は漁業の話には触れずに終わってしまいました。
今回はこの神の島“沖ノ島”と漁業との関わりについて綴ってゆきたいと思います。
沖ノ島周辺は波が高く、時には危険な海ですが今も昔も好漁場で沢山の漁船が操業を行っています。
主な漁業は中型旋網(まきあみ)、ふく(ふぐ)はえ縄、はえ縄、イカ一本釣り、アジ一本釣りなどで年間を通じて様々な操業が行われており、様々な魚介類が水揚げされています。
なかでも、トラフグは全国でトップクラスの水揚げ量を誇ります。
沖ノ島から6キロ離れたところに大島という人口700人の小さな島があります。
漁獲高の減少や燃油費の高騰で日本各地の漁村は衰退してゆく昨今ですが、この大島の漁業活動はカキ養殖や魚介類の販路開拓など積極的に行っており、次世代の漁業を担う若い後継者が多く従事しています。
大島の漁師たちは沖ノ島周辺で漁をしており、この海が“神様の海”として篤い信仰心を持って操業しています。
神聖な海から恵みを授かっていることを知っている漁師たちは、沖ノ島を大切に守り抜いており、毎日その日に獲れた魚をお宮に献上しており、時化で漁に出られない日には、漁師たちは島内の油津宮の清掃をするのです。
そして沖ノ島周辺で漁業を営む漁師たちには大切な行事があります。
毎年10月1日から3日にかけて宗像大社では秋季大祭が行われます。
その秋季大祭の幕開けが「みあれ祭」という神事で、沖ノ島の油津宮の田心姫神(長女)と大島の湍津姫神(次女)の神輿を載せた船が宗像市神湊沖合までやって来て、宗像市田島にある辺津宮の市杵島姫神(三女)の神輿を載せた船が出迎えるのです。
そして三姉妹の姫神は一年に一度、宗像大社に迎えられます。
神輿を載せた船を「御座船」と呼ばれ、その年に新造された船がその大役を務めます。
ただ、その年に新造船がなかった場合は、網元など大きな船を所有している宗像漁協の組合員の船が御座船を務めることになっています。
みあれ祭の一番の見どころは御座船を中心に、無数の漁船船団(供奉船)が大漁旗を掲げて大島港から神湊港まで進む勇ましい光景です。
この海上神幸を通じて、漁師たちは漁の安全と豊漁を祈願するのです。
世界遺産に登録を申請してから、沖ノ島の認知度が世界的に上がりました。
立ち入ることができない島なので、島の沖合数キロの地点から船で観光することにしていますが、昨年ダイバーが勝手に島に入り込む事例が発生しました。
島の船着き場に防犯カメラを据え付ける予定ですが、大島の漁師たちも昔から続いてきた言い伝えを守るため立ちあがっているのです。
画像出典元:https://blogs.yahoo.co.jp/tom_cat0517/23986208.html