何気なくテレビを見ていて、某ビール会社の秋限定商品のCMが流れると秋の訪れを感じてしまいます。
余り普段はビールを飲まないのですが、こんなときは思わず飲みたい衝動に駆られて、近所のコンビニへ走ってゆくのです。
そしてビールを買ったその足で向かうのは魚屋さん、美味しいビールに合う魚は何と言ってもさんまでしょう。
脂が焦げて香ばしい香りを楽しみつつ、アチアチと頬張りながらビールを飲む…想像するだけでヨダレが垂れてしまいます。
さてさて、皆様は「目黒のさんま」という落語をご存知でしょうか。
庶民の魚であるさんまを適当に焼いて食べたらとても美味しかったのに、丁寧に料理したら全然美味しくなかったというお話です。
3代目三遊亭金馬氏(1894~1964年)が十八番としていた演目で、最近では2009年に亡くなられた三遊亭圓楽氏が演じていました。
夏が過ぎて、高い青空にいわし雲が拡がるのどかな目黒の田舎道、当時の目黒は江戸城下町の郊外でした。
お殿様が家来を連れて目黒不動参詣をかねて遠乗りに出掛けました。
昼過ぎに目黒へ着きましたが、運の悪いことに家来は弁当を持ってゆくことを忘れてしまい、殿をはじめ一同は腹ぺこです。
すると近くの農家より、何かを焼く香ばしくて食欲をそそる匂いが漂います。
殿様がこれは何の匂いかと、尋ねると家来は「これは下魚のさんまです。殿の口には到底合いますまい」と答えますが、こんな腹が空いたときにそんなことを言ってられるかと、さんまを持ってくるように命じます。
網など使わず炭火に直接突っ込んで焼いたさんまは黒焦げで見た目はとても悪いのですが、食べてみると非常に旨い。
滴り落ちる脂の何たる旨さよ。
殿様はさんまの味が忘れられなくなり、常にさんまを思い続ける程になってしまいました。
ある日殿様の親族が集まる会合に出掛け、家老が何か食べたいものはないかと尋ねられるとすかさず殿様はさんまが食べたいと申します。
親戚はさんまの申し出に驚きますが、家来に日本橋魚河岸で買ってくるように命じます。
調理をする者がさんまを見て「こんなに脂が多いとお殿様のお身体によろしくありません」と驚き、小骨を取って下拵えをして更には蒸したものをお殿様に出すのでした。
お殿様は箸を付けますが、脂が抜けた身はパサパサで不味いのです。
「これがさんまと申すのか?もっと脂が乗って黒焦げでいい匂いがしていた筈だが…。さてこれは何処で取り寄せたのだ?」
「日本橋魚河岸にござります」
その答えにお殿様はニッと笑って言うのでした。
「そりゃいかん。さんまは目黒に限るのだ」
海から無縁な目黒のさんまが美味しいと世俗に無知な殿様を風刺するお話ですが、では目黒で食べたさんまは何処のものだったのでしょうか。
様々な説がありますが、目黒川河口の天王洲にある雑魚場で買い付けたもの、目黒川を遡上したさんまを農民が捕まえたという話が有力です。
現在、目黒区では「目黒のさんま」にちなんだイベントを毎年開催しており、岩手の宮古や気仙沼で獲れたさんまを露店で焼いて振る舞われます。
9月4日(日)に目黒駅前商店街で実施されます。
是非お出掛けされてみては如何でしょうか。
画像出典元:http://imasugunews.com/4103.html
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