前回は「幻のアワビ」と呼ばれるマダカアワビについて綴りました。
今日はマダカと並んで高級のクロアワビについて記してゆきたいと思います。
日本のクロアワビは太平洋側で房総半島より九州にかけて、日本海側は北海道南部から九州にかけて生息します。
生活環境としては5メートル前後の比較的浅瀬に生息します。
夜行性で昼間は岩の隙間や洞窟などの暗所に潜んでおり、夜になるとアオサや昆布などを活発に摂餌します。
成貝の殻長は15~20センチ程度、孵化してから1年で3センチ、3年で8センチ、5年でようやく13センチ程度まで成長します。
旬の夏になると身はとても太っており、貝殻よりはみ出しています。
三浦半島、伊豆半島、静岡県御前崎、和歌山県大王崎、紀伊半島、淡路島、長崎県五島列島などがクロアワビの産地として有名です。
伊豆諸島で漁獲されるクロアワビは主に素潜りによって漁獲されます。
資源保護のために管理は厳しく設定しており、禁漁期の設定、漁獲可能な殻長の制限、1992年(平成4年)からは、人工種苗の放流事業もおこなわれています。
近年、伊豆大島での漁獲量は、1995年(平成7年)の約6.7トンをピークに減少傾向にあり、2000年(平成12年)以降は概ね年間1.5トン前後で推移しています。
高級食材としての需要が非常に高く、刺身や寿司種としての人気が高いです。
アワビ特有の濃厚で深く甘さを感じる旨味、口に入れたら長く続く上品な旨さ、コリッとした心地よい歯ごたえが楽しめる適度な硬さがあります。
そしてクロアワビには「つのわた」と呼ばれる中腸線に、身とはまた違ったこってりとした濃厚な旨さが凝縮されていますが、春先は餌となる海藻のクロロフィルが原因で光過敏症という中毒症状を発症する場合がありますので、この時期は食べないようにしましょう。
暑いこの時期、冷たい水に浮かべた水貝は夏に涼を呼ぶ贅沢で優雅な一品です。
刺身などの生食のほかに、酒蒸しや煮貝、殻焼き、バター焼きなど、とても気品があるお料理で美味しくいただけます。
塩コショウを振ってバターでソテーにしたアワビのステーキは、思い出すだけで垂涎してしまいます。
バターと絡んだアワビの身の味わいはとても病みつきになります。
クロアワビの資源量が減少している中で、クロアワビの産地の漁協では厳しく資源管理を行っており、禁漁期の設定や採捕可能な大きさを定めています。
また都道府県や外郭団体の栽培漁業公社では、人工種苗稚貝の放流事業を行っております。
京都府の栽培漁業センターでは病気に強い種苗を長い研究の末、生産が可能になりました。
この種苗を使って京丹後市では陸上養殖施設で生産をしています。