屋久島周辺のトビウオミステリー


鹿児島県の夏の魚に指定されているトビウオ、太平洋からインド洋、大西洋の暖かい海域に生息している魚です。
日本周辺に生息するトビウオは30種ほど存在します。
30センチ程の比較的小さな魚で、海面近くでプランクトンを食べながら生活をしています。
細長い筒状の胴体に大きな尾ビレと胸ビレがあり、身の危険が生じたときは滑空して逃げることができます。

滑空するときの様相は、下部分が長い尾ビレで水中の強い推力を得て水面を滑走します。
水面から飛び出ると、飛行機の翼の様な胸ビレを拡げて、グライダーのように滑空します。
飛べる距離は100メートル以上可能で、高さは3~5メートル、滑走時の速度は時速35キロ、滑空時の速度は50~70キロに達します。
風上に向かって飛翔し、飛んでいるときに海中へ入る必要があるときは急ブレーキをかけることや、飛行方位の変更をすることができます。
水面を滑空しているトビウオの姿は、飛行機そのものです。
勢い余って時折、漁船に突っ込んでくることがあります。
2008年、鹿児島県沖を航行するフェリー船中よりNHK撮影クルーが45秒に渡り、トビウオの滑空の様子を映像に捉える事が出来ました。
これは世界最長の記録です。

さて、そんなトビウオですが近頃、鹿児島県水技センターが調べたところによると、屋久島周辺で漁獲されるトビウオのオスとメスの割合が94:6と極端に偏っているのです。
この海域に生息するゴマサバ、マアジなど他の魚種はオスメスの割合が50%ずつなのです。
何故、トビウオだけがこんなにオスメスの構成比が偏っているのでしょうか。

実はトビウオの生態と、屋久島のトビウオ漁の漁法により偏った数字が出てくるのです。
産卵期が近づいてくると、トビウオのオスとメスは別々の異なる環境で生活を送ります。
オスはメスより先に成熟して岸辺の藻が生い茂っている産卵場に到着して、メスが来るのを待ちます。
そして成熟したメスは、日没時に順次産卵場へやって来て産卵を行い、終わった個体は沖合に帰ってゆきます。
屋久島、種子島周辺は日本で有数なトビウオの産卵場で、産卵期はトビウオが大量に押し寄せ、周辺数十メートルの海は精液で白くなっています。

屋久島ではトビウオ漁は伝統がある「トビウオロープ曳浮敷網」という漁法で行われます。
日中に2隻の船でロープを張り、岸よりの漁場でトビウオの大群を網に追い込みます。
そのため、日中ということもあり岸辺にいるのは殆どオスだけで、メスは沖合にいるので94:6という大幅に偏った数字が出るのです。
従って、沖合にいるメスの数を推定すると概ね50:50の数字になるとされています。

トビウオは脂が少なく、新鮮な魚は刺身にするとさっぱりとした旨さが楽しめます。
加工品としても利用され、なめろうの材料になります。
メスが持っている卵は「とびっこ」として、寿司のネタには欠かせないですね。
次の夏は屋久島でトビウオ三昧…いいなぁ。

画像出典元:http://cyclist.sanspo.com/53316/yakushima_travel19

新鮮な鮮魚が手軽に買える、サカマアプリ

blank

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事