アワビ・トコブシ栽培漁業…放流に向けた種苗生産 (その6)


桜が咲く頃、すくすくと育ってきたトコブシの稚貝は食欲が旺盛で、配合飼料を残さず食べます。
この頃になると、かなり大きさに個体差が出てきます。
同じ時期の採卵の種苗でも、最少6ミリ、最大23ミリとかなり大きさにばらつきがあるのです。
なるべくなら放流時までに大きさの個体差を解消して、小さい個体は早く成長させたいところです。
そのため、稚貝の大きさごとに選別をして飼育密度の調整を行います。※1
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波板剥離と同様、麻酔を含んだ海水を張った水槽にシェルターごと投入して、麻酔が効いてシェルターから剥がれた稚貝を中・小2種類の目合いの篩にかけることで、大・中・小の三種類に選別します。
選別作業は手をずっと振り続けますので、かなりの重労働です。
現場作業員に選別作業を行うスケジュールを発表したら、あからさまに嫌な顔をする人がいるとか、いないとか…。
私が在籍していた事業場では篩を振る自動選別機という機械を導入していましたので、その労力はかからず、手で振るよりも大幅に作業時間の短縮が達成できました。※2
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この作業の際には重量計量を行うことで、飼育している個数のおおよその数が判明できます。
選別後、シェルターを敷き詰めた飼育水槽に戻しますが、シェルター一枚当たりの飼育密度を薄くして広い育成環境を作ります。※3
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ゴールデンウィークが過ぎた5月、育ちが速い稚貝は放流サイズの25ミリ以上に成長しています。
トコブシ以外のクロ・メガイ・マダカアワビ稚貝の飼育で、一番気を付けなければならない時期に入ります。
上記アワビのみ筋萎縮症により大量死亡する事例が報告されています。
ウィルス・この時期の海水水温で生じる菌などが疑われていますが、未だ原因の解明ははっきりとされておらず、不明な部分も多いのです。
そのためアワビ種苗生産は一貫して生海水の使用は控え、ろ過海水や殺菌海水を使用しています。※4
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トコブシはその症例報告がされていないので、ふ化直後以外は生海水のみで生産しています。(註:私が退職後施設更新によりトコブシもろ過海水で飼育しているとのこと)

梅雨が過ぎ夏に入ると、そろそろ放流の準備に入ります。
放流する市町村自治体や漁協の種苗受け入れ先、放流種苗数は種苗生産が始まる前に決定しています。
種苗受け入れ先と連絡をして放流日を確定します。
夏場の放流は台風が発生しやすいので、常に天気図とにらめっこです。
放流日が強風で波が高い場合は順延します。
作業の安全が第一ですが、せっかく愛情込めて育てた種苗が波にさらわれたら元も子もありません。

※1画像出典元:http://kaiji-suisan.jp/awabi/
※3画像出典元:http://akitasaibai.com/
※4画像出典元:http://member.fukunet.or.jp/coshin/service_1.html
トップ画像出典元:http://www.nagi.org/diary/?date=20100327

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