京都府の北端に位置する伊根町に、舟屋という独特のたたずまいの集落があります。そこはまるで海に浮かぶ集落のような光景です。
その場所は京都府与謝郡伊根町字日出、平田、亀島にあって、伊根町が管理している第2種漁港、伊根漁港にあります。
穏やかな伊根湾に面し、後ろの山は急峻、前は急深な海という地形が特色の漁港です。また、干満の差が少ないため、舟屋と言われる独特の漁師の住居が発達してきました。
舟屋の1階は漁船を収納するガレージになっています。ほかに漁具の保管もできます。2階にも部屋があり、人が住むというより倉庫のようになっているそうです。
舟屋の裏に母屋が別棟であり、人は母屋に住んでいるそうです。舟屋は海に向かって妻入り(屋根の八の字が正面)、その後ろに平入り(屋根が平行な方が正面)の母屋があります。
舟屋という特有の景観により、平成17年に「国の重要伝統的建造物群保存地区」に選定されました。舟屋群に囲まれた伊根湾一帯が伊根漁港区域になっています。
昭和初期のころまでは舟屋と母屋の間の空間は、そこに住む漁師の庭の一部でした。つまり村には道路というものがなかったのです。
舟を使った海上交通が主な手段でしたが、生活様式の変化に伴って、舟屋と母屋の空間に道路ができました。
全国にはたくさんの漁師町がありますが、舟屋があるのは伊根漁港だけです。これは伊根湾の地形がそうさせたのでしょう。
日本海に背を向けるように入り込んだ南に向いた入り江、伊根浦は穏やかな漁場です。ただし人の住める面積が非常に狭く限られているため、各自が舟屋を持ち、生活するようになったようです。
伊根湾は漁場として恵まれており、大型定置網漁や、小型定置網、はえ縄漁、イカ釣りなども営まれています。湾内ではぶりの養殖や、クロマグロの蓄養も行っています。
主な海産物はイワシ類、アジ類、サバ類、ブリ類、鯛類、イカ類などがあります。
今でも観光客が来ても観光バスが通れる道幅はないようです。これだけの景観を持ちながら、観光化は進んでいません。
規模の小さな船宿はあるようですが、日帰りの観光客には食道すらないようです。
伊根漁港では朝7時ごろから朝市が始まります。町内放送で漁船が帰港したことが告げられると、地元の人たちが朝市に集まります。旅人も参加は可能だそうです。
町には魚屋がありません。地元の人はこの朝市にバケツ持参で買い物に集まるのだそうです。新鮮な魚をバケツ一杯に持ち帰るそうです。
町の景観を見たいという人のために、海上タクシーがあります。遊覧船もありますが、海上タクシーは小回りが利くし、ガイドの話も面白いと評判です。
伊根湾の奥まったところに舟屋の密集したエリアがあります。このあたりでは映画やテレビドラマの撮影が多く行われたといいます。「寅さん」や「釣りバカ日誌」など、撮影のスポットになっているようです。