漁獲した魚を大切にする活動で街の活性化、島根・松江「福浦さわらの会」


島根半島の東にある松江市美保関町は山陰地方最大の漁港・境港が近くにあり、一本釣りの漁業活動で盛んな街です。
イワシ、サヨリ、アジ、メバルなど季節の魚が漁獲されています。
そして近年、サワラの漁獲量が増えており重要な水産物の位置づけとなっています。
漁獲された魚は岡山県岡山市の中央卸売市場に運ばれ、岡山の人たちは刺身など美味しく食べるので人気があります。

しかしサワラは身持ちが短いため鮮度が急速に落ちてしまい、身割れがしやすいなど取り扱いが難しいので安くなってしまいがちでした。
また、リーマンショック以降の不景気で更に安値で取引されてしまいました。
漁獲量もあり美味しいサワラを現状の安いままでは勿体ない。
そこで平成19年に、美保関町の漁師や漁協関係者で「美保関のサワラ」にしかない付加価値とブランド化を図ろうという声が上がります。
現役の漁師で10代から船に乗り続けているJFしまね美保関支所の組合員、桜井利弘さんが中心になって「福浦さわらの会」が結成されます。

まず、最初に取り組んだことは魚価の低迷の原因とその対処について分析することでした。
分析をして、魚価単価の低下に歯止めを掛けるための対処法で漁の現場にて新たな試みを始めました。
新鮮な状態でサワラを流通するために船上での活〆、より早く市場に送るためのネットワークを築くことです。
そして、出荷の際には魚体に傷が付かないために専用の箱に入れて、「美保関のサワラ」と簡単に識別できるよう、ステッカーとナンテンの葉を添えるようにしました。

ブランド化確立にあたって、当初は様々な紆余曲折がありました。
サワラ漁は一人で船に乗り込んで一本釣りで行いますが、揺れる船上を一人で釣ったサワラを活〆するのはなかなかの重労働です。
また、慣れない初めての活〆作業に漁師たちは四苦八苦してしまいます。
そこで、会長の桜井さんが中心になって、サワラの釣り方、活〆の方法を文書でマニュアルを作成します。
分かりやすい内容で、しかも長い漁師経験と実績がある桜井さんの手法を盛り込んだマニュアルに若い漁師たちは喜び、上質なサワラの水揚げに闘志を燃やしたのでした。

また、岡山の市場まで2日掛かっていた流通が改善され、釣った翌日には岡山の市場に到着する専用便の開設をしました。
市場でも箱の上のナンテンの葉がアクセントになり、市場関係者が一目で「美保関のサワラ」を認識するようになり、これまでの2倍の取引金額を達成しました。
今では「ナンテンザワラ」の名前で仲買人の人気を集めています。

美保関の漁師や漁協職員は「美保関のサワラ」の品質を一層向上するため、一丸となって技術のレベルアップ、勉強会など様々な意見や考えを共有しています。
そして試食会で消費者に「美保関のサワラ」のアピール活動や、他の地区の漁業関係者に研修、視察を積極的に行い、漁法から鮮度管理の手法などをレクチャーして普及に努めています。

現在の「福浦さわらの会」の会員は10名、20代から80代まで幅広い年齢層です。
そして、異業種から漁師に転職した会員もいるのです。
地元産業の漁業の活性化に日々取り組み、平成22年には水産庁が「地域社会との連携で築く元気な水産業」に認定して天皇杯を受賞しました。

画像出典元:http://kikusan.com/

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