イワシは安くて栄養満点。いつでもスーパーで手に入るものと思い込んでいました。しかし昨今、イワシの漁獲量が減ってきたというニュースを聞くにつけ、スーパーに出向いては値段を気にするようになりました。鮮魚店にイワシが並んでいない日も出てきました。心配です。
☑鰯の種類は数百種あるといわれますが、食用として流通するのは次の3種類です。
☛「真イワシ」普通「イワシ」と呼ばれるものは「真イワシ」のことです。背は青く、側面には7~8つの点があり、「ななつぼし」と呼ぶ地方もあります。
煮ても焼いてもフライにしても、刺身で食べてもおいしい魚です。
マイワシは大きさによって呼び名が変わります。
・25㎝ほどの大きなものは「大羽イワシ」
・10㎝~20㎝位のものは「中羽イワシ」
・10㎝に満たない小さなものは「小羽イワシ」または「平子イワシ」と呼んでいます。
☛「ウルメイワシ」は灰色がかった薄青色の魚で、体型はずんぐり型です。
眼に膜がかかっていて、潤んだように見えるためウルメイワシの名がついたようです。
ウルメイワシは加工されることが殆どで、「ウルメ丸干し」や「開きもの」に加工されて市場に出ます。
☛「カタクチイワシ」は背が黒いため、「セグロ」「セグロイワシ」と呼ばれます。
マイワシより鮮度落ちが速いため、地元のスーパーでさえ鮮魚として売り出すことは難しいようです。
カタクチイワシは「ちりめんじゃこ」として食卓に登場します。お正月のごちそう「ごまめ」や「煮干し」は一級品です。
イワシという漢字の由来は有名ですね。海の中では他の魚たちの餌として食われ、漁で水揚げされても痛みが早いことから、弱い魚という意味で、鰯という字が作られたそうです。
沿岸を群れをなして回遊し、遊泳能力に優れた魚です。プランクトンを餌としているため、気候や水温によってプランクトンの発生に変化が生じ、プランクトンが減れば、イワシの漁獲にも大きく影響するようです。数十年周期で漁獲量の増減が見られるのも、この気象変動の影響によるものです。
クジラやほかの大型回遊魚に襲われ、餌として捕獲されるためにイワシの漁獲量が変わるという説があったようですが、プランクトンの増減による説が通説になっています。
近年イワシの漁獲量が激減し、庶民の魚であったイワシは高級魚になりつつあります。
☑いわしの主な漁獲量ランキング
(平成22年農林水産省)
順位 全 国 5242234t シェア(%)
1位 千 葉 87189t 16.1
2位 茨 城 64438t 11.9
3位 三 重 46220t 8.5
4位 長 崎 34079t 6.3
5位 島 根 31197t 5.8
6位 愛 知 27672t 5.1
7位 北海道 23362t 4.3
8位 愛 媛 18675t 3.4
9位 宮 城 18593t 3.4
10位 大 阪 17952t 3.3
その他 172875t 31.9
鰯は全国どこでもとれる魚ですが、千葉から茨城にかけては群を抜いていますね。
鰯の産卵を調べてみますと、産卵時期は生息する海流と水温によって産卵期が違っています。津軽海峡では1~6月ごろ。関東から東海にかけての海域では3~6月、土佐湾から日向灘海域では11~4月、山口から九州にかけては12~4月、山陰では3~6月。このように海域によって産卵時期は異なります。
したがって産卵を控えた鰯は脂がのっておいしい時期ですが、旬は何時かということになると一概には答えられない魚ではないでしょうか。
俳句では季語は秋となっています。
しかし「春鰯」という春の季語もあるため、迷ってしまいますね。
産卵前であれば季節を問わずおいしくいただける魚ということでしょうか。庶民の味方が高嶺の花にならないように、毎年安定して多くの漁獲を望みたいものですね。
~大漁~
朝焼小焼だ 大漁だ
大羽鰮の 大漁だ。
浜は祭りの ようだけど
海のなかでは 何万の
鰮のとむらい するだろう。
金子みすゞがうたってます。
人間の食料として捕えられたイワシたちの命。一匹たりとも無駄にできませんね。