新緑の季節になると黒潮に乗ったカツオの群れが日本近海に現わします。
本来カツオは暖流が流れる南方の海に棲息する魚ですが、春になると餌を求めて北上して鹿児島・土佐・伊豆の太平洋沿岸を通ります。
4月に水揚げされるカツオは「初鰹」と呼ばれる上物で、今も昔も初夏の風物詩ですね。
日本沿岸を訪れるカツオの群れは更に北上を続けて、秋になる頃には三陸沖から北海道の東南部の海域まで達し、今度は再び南に向かって回遊を始めます。
夏のさっぱりした味わいに対して、秋の「戻り鰹」と呼ばれるカツオは餌をたっぷり食べて肥えており脂が良く乗った濃厚な味わいが楽しめます。
カツオ漁は巻き網、延縄、一本釣りにより行われますが、主流な漁法はやはり今も昔も一本釣りでしょうか。
カツオ船は「土佐の一本釣り」で有名な高知、宮崎、鹿児島に所属している船が多いです。
遠洋漁業は太平洋から南太平洋に掛けてカツオが回遊する海域全域、近海漁業は南西諸島から三陸沖に掛けて漁を行います。
魚群レーダーでカツオの群れを見つけた漁船は生け簀に活かしているイワシなど生き餌を水面に撒きますが、そのときカツオの群れは大好物なイワシの匂いを感じ取ります。
そして、餌撒きと同時に船べりから「撤水器」というものを動かすと、シャワーのように勢いよく水面に向かって水を撒きはじめます。
カツオはイワシの群れが泳いでいると思いこみ、夢中になって水面を泳ぎ続けます。
そこで漁師たちは船べりを一列に並んで、竿を降ろして一本釣りを開始します。
興奮状態になったカツオは釣り針に付いた「疑似餌」に向かって喰いついてきます。
この擬似餌がついた針は“かぶら”と呼ばれるもので、返しがないストレートなものです。
返しがないため、釣り上げて魚を頭上高くに跳ね飛ばしたとき、するりと針から魚が外れます。
この一本釣りの釣り方を「跳ね釣り」と呼ばれるもので、今も昔もこのスタイルは変わりません。
十数キロのカツオを数時間に渡って休みなしに釣り続ける一本釣りはとても重労働であり、一人前になるまでには3年以上の時間が掛かります。
そして一本釣りのベテランになったとき、1尾を2秒というスピードで次々に釣ってゆくそうです。
カツオ船内で花形とされる舳先で堂々として釣るベテランの漁師の姿は、若い漁師にとって憧れの存在でありましょうか。
画像出典元:http://column.asken.jp/purpose/purpose-3829/