サケあれこれ その5


前回ではサケ科の魚は生まれた川に戻る「母川回帰」の習性があることを綴りました。
一部のサケ科の魚は生涯を産まれた河川で生活しますが、大部分の魚は河川に生まれたのち、海洋に繰り出して数年に渡り回遊行動を取ります。
何故、外敵が多い海洋に出るのか?
サケ科の魚は“冷水性魚類”であり、生息している河川は水温が低く、そして貧栄養のため餌の生産性が低いのです。
一方、海洋は高栄養のため餌の生産性が非常に高く、サケ類の魚は海洋へ出ることによって成長期は成長速度を高め、成熟期になると自分のエネルギーを子孫である卵に供給することができるのです。
川で生まれた稚魚はふ化後20日前後で“パーマーク”という黒い小判のような斑点が体表に現れます。
このパーマークが現れた頃には、稚魚は川底で餌場の縄張りが出来上がっており、侵入する他個体を攻撃するなど非常に行動的で、ときに川面に落ちた木の枝に向かってアタックをします。
パーマークのある稚魚の時期は回遊性の高いシロザケやカラフトマスではとても短く数カ月、一年以内には海に向かって回遊行動を始めます。
サケ科の稚魚は海に降りる直前になると海での生活に順応するため、変態現象が見られます。
稚魚の特徴であるパーマークがなくなり、“スモルト”と呼ばれるサケの成魚の様な銀色の体型に変わるのです。
スモルトとはエラの上皮にある体内イオンを排出する塩類細胞が発達することです。
これにより淡水で育った稚魚は海水魚と同じく、能動的に体外から入った塩分を排出することができるようになり、海中の高浸透圧環境下で生きられるのです。
スモルトの時期に差し掛かった稚魚の体内のメカニズムについて、甲状腺ホルモンが分泌されることにより体の代謝を活発化させて変態を促します。
甲状腺ホルモンは月の満ち欠けに影響を受け、新月の日に分泌のピークを迎えることが判っています。
そして、降雨による川の水質変化に反応して海に降りる“降河行動”を誘発させるなど、甲状腺ホルモンは稚魚の中枢神経を刺激して行動的な変化を生むのです。
その他に副腎皮質ホルモンの分泌で浸透圧を保つ塩類細胞の発達、成長ホルモンで骨の形成や体の成長を促進して、海水適応ができる体を造ります。
海洋で生活するために必要な体の機能が造られることで、サケ科の魚は広大な生活環境を手にすることができました。
画像出典元:https://gunosy.com/articles/R8PZ5

 

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