サケ科の魚が持つ最大の特徴は「母川回帰」ではないでしょうか。
川で生まれて海に出て、広い海洋を数年間回遊して産卵のために生まれた川に戻って来る。
海で育った大きなサケが川を遡上する逞しさや、産卵をして死んでゆく儚さは神秘的であり、ドラマティックに感じてしまいます。
サケの生活史とは、川に始まり川で終わるものなのです。
フランスとイタリアの国境付近、ピレネー地方にある洞窟壁画にはサケが川を遡上する様相が描かれています。
母川回帰行動が突き止められたのは1653年のことで、タイセイヨウサケの稚魚にリボンを括りつけてこれを標識としました。
リボンを付けた稚魚が外洋で育って成魚となり、産卵のため生まれ育った川に戻ってゆく行動が確認され、科学的に母川回帰が立証されたのです。
古い時代からサケの母川回帰が観測されていますが、何故母川に戻るのかというメカニズムは未だはっきりとは分かっていません。
一生のうち殆どの時間が広い海洋で回遊行動をしているため、サケの生活史の全体を掴むことが困難なのですが、現在科学者たちに最も支持されている説は、「サケは母川の匂いを記憶している」ということです。
外洋で長期間回遊していてもサケには母川の匂いは正確に覚えているため、迷うことなく自分が生まれた川に戻れると見ています。
鼻に詰め物をしたサケ成魚の行動を観測したところ、母川には戻れなかったことを確認しました。
研究の結果、サケは生まれてから極めて短期間の間で母川の匂いを記憶することが判明されています。
さてサケ科の魚は、「イトウ」「イワナ」「タイセイヨウザケ」「サケ(シロザケ)」の4種に分類され、後者になる程、進化の進んだ魚種のグループです。
サケ科の魚は例外なく川で出生しますが、海洋で回遊行動をするものは進化した魚種たちなのです。
イトウやイワナの一部は短期的な海洋生活を送るものが存在しますが、基本的には河川生活性が強い魚種です。
日本に分布する主なサケは「シロザケ」と「カラフトマス」ですが、これらはサケ科魚類の中で非常に海洋回遊性が強く見られます。
日本の河川で生まれて海に出たサケは、太平洋からオホーツク海、ベーリング海、そしてアラスカ湾周辺を2年以上の時間をかけ、数千キロの回遊を行います。
河川に生まれたサケは、何故外敵の多い外洋に向かうのでしょうか?
このお話は次回にしたいと思います。
画像出典元:http://blog.livedoor.jp/hide_kuwako/archives/35114963.html